中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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第22回 メダカの恋に火をつけるニューロンを発見!~メダカをモデル動物に社会性行動を探究する竹内・奥山コンビを訪ねて~

思春期の中高生たちにとって、「恋をする」ことは最大の関心事の一つに違いない。でも、「異性を好きになる」とき、動物の脳の中ではどんな遺伝子や神経機構が働いているのか考えてみたことがあるだろうか? メダカのオスとメスを使って、その「恋心」を細胞や遺伝子レベルで解明しようと挑んだのが、新進気鋭の二人の研究者だ。

メダカの恋心を研究してみたい!

「メダカのメスは、初対面のオスより、すでに一度お見合いしているオスのほうを、交尾する対象として優先的に選ぶ」。こんな論文が2014年1月初め、米科学誌「サイエンス(電子版)」に掲載され、注目を集めた。論文を発表したのは、現在米国マサチューセッツ工科大(MIT)利根川研究室の奥山輝大先生と、東京大学大学院理学系研究科の竹内秀明先生だ。

メダカは、毎朝性行動する魚だが、オスとメスを一晩ガラス越しに「お見合い」させ、翌朝同じ水槽に放つと十数秒で性行動を始める。しかし、これまで見たこともないオスに対しては、配偶相手として受け入れるまでに時間がかかることを突き止めたのだ。
つまり、メダカのメスは「どのオスでもいい」というわけではなく、事前に見つめていたオスを視覚記憶し、恋の相手として受け入れるということになる。それはいったい、脳の中のどんな神経細胞が関わり、どのようなメカニズムが働いているのだろう。そして、こんなユニークな研究はいったいどのようにしてスタートしたのだろう。

映像制作:(株)ドキュメンタリーチャンネル・藤原英史 / 東京大学・竹内秀明

お見合いした場合としていない場合のメダカの性行動の違いが、動画でよくわかるよ!

竹内先生によると、「そもそも『メダカの恋』について研究したいと考えたのは奥山先生だった」という。
「私は以前ミツバチを使って社会性の研究をしていたのですが、ミツバチの社会的な行動は遺伝子による決定要素が強く、複雑な社会性行動を探るには、メダカのほうがモデル動物としてふさわしいと感じ、研究対象をメダカに変えることにしたのです。なにしろ日本ではメダカ研究の歴史が長く、2007年には約2万個のゲノム情報がほとんど解読されましたし、突然変異体のライブラリーも何百種類とあり非常に充実していますから。
ちょうどそのころ、今から7年ほど前のことですが、奥山先生が私の所属する研究室に入ってきて、メダカを研究対象にして『メダカの恋心を研究したい』と言い出したのです。
そこで、私が探究したいと考えていたメダカの群れ行動などの社会性研究と、奥山先生のメスの配偶者選択の研究を一緒にやろうということになりました」
こうして、新進気鋭の生命科学研究者の共同研究がスタートした。

竹内 秀明
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻助教

1971年生まれ。1989年筑波大附属駒場高校卒業。1994年東京大学薬学部卒業、99年同大学大学院薬学系研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、未来開拓事業リサーチアソシエイトなどを経て、2003年東京大学大学院理学系研究科産学官連携研究員、2004年同大学院理学系研究科生物科学専攻助手、2007年より助教。

奥山 輝大
米国マサチューセッツ工科大学日本学術振興会特別研究員SPD

1983年生まれ。2002年筑波大附属駒場高校卒業。2006年東京大学理学部生物学科動物学専攻卒業。2011年東京大学大学院理学系研究科修了、2011年7月東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻特任研究員を経て、2013年より米国マサチューセッツ工科大学にて日本学術振興会特別研究員SPD。

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