この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第15回 細胞の中身が入れ替わる「オートファジー」の謎に迫る 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 細胞生理学分野 水島 昇 教授

自然のしくみや生命の法則が知りたい!

───当時は、将来どんな職業についてみたいと考えていたのですか。

父が医者で祖父が物理学者だったこともあって、小学校の頃は科学者か医者になろうと思っていました。高校生になると、物理が好きだったこともあって、私自身も先生も物理学者になるだろうと思っていたようです。
ところが、ちょうど高校生の頃、DNAや遺伝子工学、バイオテクノロジーという言葉がしばしば生物学で使われるようになってきて、もう成熟してしまった(と、当時は愚かにも考えたということですが)物理学よりも、これから研究の可能性が開けている生物学をやってみようと考え始めました。分子生物学とか生化学、生命科学がすごくカッコ良く見えたんですね(笑)。

───進路選択の決め手になったのは?

最初は理学系の学部に行って研究者になろうと思ったのですが、父親から医学部に進学しても生命科学やからだ全体の研究ができると教えられました。それで、東京医科歯科大学の医学部に進学することに決めたのです。私は、研究者になろうと思って医学部に進んだので、ほとんどが医者志望の学生の中で、少し異質な学生だったかもしれません。

───大学ではどんなふうに過ごしましたか。

オーケストラに入ってオーボエを吹いていました。小学生の頃のピアノ、中学・高校のブラスバンド、大学に入ってからのオーボエ、今でも音楽は大好きですね。私はある全体が要素、あるいは単位からできていることに安心感をもってしまうのだと思います。もちろん、要素にわけても全体がわかるわけではないのですが。音楽が好きなのは、音という要素にいつでも分解できる安心感と、それが集まって構成される音楽のすばらしさの両方から来ているのではないかと分析しています。
それとスポーツもやっていました。テニスは部活動には入っていませんでしたが、早慶と合同で練習したり、週末には合宿するなどずいぶん熱心だったですね。

───勉強はどうだったのでしょう。

大学に入って教養課程で初めて生命科学、生物学の授業を受けて、DNAがタンパク質の種類を決める情報を持っているとか、二重らせんでできていることなどを学んで、非常におもしろいと感じました。もっとこの分野を究めて、自然のしくみや生命の法則が知りたい、と感じました。そこで、細胞生物学、分子生物学などのことをもっと知りたくて、生化学の先生のお願いして早朝に勉強会を開きました。そのほか、フランス語の原書講読の勉強会を開くなど、勉強も熱心でしたよ。

───医学部に入ったのですから、臨床医学も学んだわけですね。

ええ、将来は医者にはならず、研究者になるつもりでしたけれど、それだからこそ、臨床医学をしっかり学ぼうと考え、一生懸命勉強しました。内科、外科、小児科、産婦人科、皮膚科なども一通り経験しました。そのおかげで、からだ全体から生命科学を捉えることができて良かったと思います。

───大学院ではどんなテーマを選びましたか。

当時、免疫学の研究が進みだした時代でした。免疫系を構成する細胞群がどんな働きをして、どんな細胞間のやりとりをしているのか、相手をどうやって認識するかなどが明らかになってきていました。利根川進博士が免疫と遺伝子の研究でノーベル賞をもらったのもこの頃でした。
そんなこともあって、私は大学院で免疫をテーマに研究することにしたのです。けれども、4年間免疫について研究しているうちに、免疫システムの複雑さと幅広さに自分の研究能力が追いついてないと感じるようになったのです。免疫細胞間のコミュニケーションを研究するよりも、細胞内で起きる現象の研究をしてみたいと思うようになりました。

ポスドク時代。岡崎国立共同研究機構のテニス大会

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