中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第1回
幼いころの夢を実現していく
藻類研究者の歩む道

第1章 魚の成長促進から藻類にヒントを得た瞬間接着剤開発まで 〜中高生の研究紹介〜

藤原
皆さん、高校生と中学生なのですね。どのような研究をやっているのでしょうか。
米山
本年度から部長となりました、一貫部高校2年の米山と言います。よろしくお願いします。
私たち生物部では複数の研究を行っています。私は部長として、すべての研究班に所属して内容を確認するようにしていますが、重点的に活動しているのは、魚に緑色光を照射する研究、それから実験室内で自然環境を再現するという研究です。
毎日の飼育生物の世話や観察も楽しく、苦になりません

生物部部長・米山 慶亮(ヨネヤマ ケイスケ)君(高2)

魚の研究は、北里大学の魚類分子内分泌学研究室の高橋明義先生から、「マツカワガレイに緑色光を照射したところ、魚類の成長が促進した」というお話を聞いて、私たちもやってみたいとスタートしました。私たちは、ヒラメを用いて実験を行っていて、強い緑色光を当てるとヒラメの摂食量も体重変化も1.6倍になるということが分かりました。現在は「なぜ緑色光を照射すると、魚類は低温下でも食欲を維持するのか」という疑問に対しての仮説を検証しようとしています。

緑色光を照射して飼育することでヒラメの体長が大きくなることを実験で確認した

緑色光はヒラメの摂食量を増加させ、その結果体重が増えることがわかった

緑色光の照射に反応して過剰分泌されるホルモンは魚類の体色変化にも関わるので、養殖魚の色揚げ(体色を鮮やかにすること)効果も予想される

土屋
一貫部高校1年で、副部長を務めています土屋です。私たちは、ヒキガエルとダルマガエル、2種のカエルの透明骨格標本を作成して骨格形成過程の比較をするという研究を行っています。大腿骨部分に着目して、骨の強度とカエルの身体の大型化の関係を調べて「両生類の進化の過程を解明」しようというのです。
カワモズクの培養に挑戦しています

生物部副部長の土屋柊人(ツチヤ シュウト)君(高1)

また、絶滅危惧植物を守り、生活に役立てる目的で、「絶滅危惧植物インドオオイシソウの生育調査と培養の試み」を行っています。私たちは、静岡県の青野川において、インドオオイシソウ*を発見し、このインドオオイシソウを絶滅から守るための培養実験を行おうと考えました。

インドオオイシソウはオオイシソウ科の紅藻類の一種で絶滅危惧種に指定されている。紅藻類ではあるが青緑がかった色をしている。本記事では以後、オオイシソウと略称して記載する

オオイシソウの生育には、水流が不可欠なことが分かっています。そこで、私たちがヒントにしたのは、家庭用の流しそうめん器です。この仕組みを使うことで、水流を安定的に与えることが可能ではないかと考えたからです。さらに、このオオイシソウの培養の経験を生かして、今度はカワモズクという、オオイシソウと同様に、絶滅危惧種に指定されている貴重な藻類の培養も手掛けています。また、オオイシソウはすごく流れが強い場所でもしっかりと付着しています。私たちは、このオオイシソウの胞子が付着する仕組みを解明できれば、水中でもしっかりとつなぎとめることのできる瞬間接着剤が開発できるのではないかと考えています。さらに、たんぱく質(同士)も接着できれば、手術等で切開した組織を止める役割として、応用できる可能性もあるので、研究を進めていきたいと思っています。

流しそうめん器をヒントに水流を生み出せる培養器を作り、見事オオイシソウを培養することに成功した。

藤原
そうめん流し器が装置のヒントになるというのは、すごくびっくりしました。オオイシソウが張り付く「のり」はどのようなものだと考えているのですか。
大瀧
まだ具体的な物質は調べていないんですけど、かぎ爪のような組織を持っているのか、もしくは化学的な物質を出してるのではないかと考えています。まずはしっかり観察を行うことから進めています。
藤原
現象をまずはっきり見るのが、一番重要だと思います。藻類の中には、多糖類をいっぱい細胞の外側に分泌するものも多いから、もしかしたらそうしたものでくっついてるのかもしれませんね。
三橋
一貫部中学2年、中学部の部長をしています三橋です。米山先輩と一緒に魚の研究を行っています。よろしくお願いします。
魚が好きで、飼育したヒラメの試食会をきっかけに生物部に入部しました

生物部中学部部長の三橋芽依(ミツハシ メイ)さん(中2)

大瀧
一貫部中学2年の大瀧颯祐(ソウスケ)と申します。私は、藻類の胞子が濁流の中でどのように接着するのか、水中瞬間接着剤の発明に向けてという研究をメインに、あとサブで、カエルの大腿骨形成過程の観察と、それから飼育装置の開発、この3点に関わっています。よろしくお願いします。
僕からは「実験室内に自然環境を再現する試み」の研究を紹介します。再現する環境は3つあり、1つ目は水域の再現、2つ目は日本各地の植生の再現、3つ目は夜行性小動物の管理です。水域は、上部が飼育水槽、下部がろ過槽であるオーバーフロー水槽を使用して、再現を行いますが、生物部ではそのろ過槽部分を100円ショップで購入したプラスチックバケツなどを使い自作することで、よりコンパクト化した水槽を使っています。

一部を自作した装置を使って、自然環境を再現する。水域(淡水の上流、中流、下流域、汽水域、海水域)、植生(亜熱帯雨林から針葉樹林まで)のほか、昼夜を反転させた飼育装置により夜行性小動物の観察も可能にした。環境を再現することで、生育する生物本来の行動を観察することができる。写真は高層湿原の再現の様子

自然環境のうち、雨を再現する装置を作ることが目標です

中学部副部長・大瀧颯祐(オオタキ ソウスケ)君(中2)

榎本
一貫部中学2年の榎本です。魚の研究をやっています。
文系の人間だと思っていますが、生き物はとても好きです

榎本咲喜(エノモト サキ)さん(中2)

藤原
皆さんの研究はとても多岐にわたっていますね。面白い研究ばかりで、圧倒されました。