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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

マンガdeひもとく生命科学のいま ドッキン!いのちの不思議調査隊

第3話 脳情報の解読

SF映画などでは他人のアイデアや記憶を盗み出す話がしばしば登場する。最近公開された『レミニセンス』は、記憶潜入エージェントである主人公が、脳内記憶を読み取って映像化するマシンを使い、他人の記憶の中にわけいって捜査するというストーリーだった。とはいえ、そもそも私たちが見ていること、考えていることを解読するなんてことが可能なんだろうか? 第3話は、脳情報解読の最前線を紹介!

DOKIDOKI星のみなさんお元気ですか?地球調査員ドッキンです

地球人はみんな「スマホ」という板みたいなものに夢中です

プププ……!おもしろ~い

ウフフ……サイコーね!

何かを見ているようなのですが

ねぇ~ふたりとも何見てるドッキ?

え~ヒミツ!!

ナイショだよぉ~

何を見ているのか絶対に教えてくれません……

「目は口ほどにものを言う」という地球のことわざがあるけど……

何も映ってないドッキ

地球のことわざ…ドッキン博学ね

耳の中を見たらわかるとか……?

ない!ない!

頭の中を見るにはどうしたらいいドッキ…?

むちゃをするのはやめて!

ヒトが何を見ているのか調べる方法……

ぜったいどこかにあるはずドッキ!!

すごい!スマホを使いこなしている

さすが調査員!

なるほど…それは私たちの研究室で調べている方法でわかるかもしれないですね

み……見つけた~!

西本伸志 先生(にしもと しんじ)

大阪大学大学院生命機能研究科 知覚・認知神経科学研究室 教授 国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター 特別招へい研究員

ふたりとも!もうすぐヒミツがバレバレになるドッキ!覚悟してよぉ!

そんな……見ている映像が他人にわかるようになるなんて本当にあるの?

「頭の中を見ようとした」というのはなかなかセンスがいいですね!

私たちの研究でも映像を見る人の視覚と脳のはたらきを調べたんです!

脳…!?

私たちが日々目にするさまざまな物があります

そして動きや形そのようすなど…

それらを目にしたとき脳活動パターンがそれぞれ異なるはずです

そこでfMRIという装置の中で映像を見ている人の脳活動を記録しました

磁気共鳴機能画像法(functional magnetic resonance imaging, fMRI) 磁気の力で血液のほんのわずかな動きの違いを調べる装置だよ。

まるで暗号のよう……

こうして得られた膨大な脳活動データをもとにして……

これを見ているときにはこんなパターンになる……

こういう要素(特徴)に応答しているのでは…?

ではこんなパターンがあらわれているときにはこんなものを見ているのではないか?

というような方法で見ているものを推定していきます

このパターンならきっとこれだぞ!

あった~!

まるで探偵の謎解きみたいだね!

ドキドキする~!

えぇ…

この脳研究と人工知能研究を結びつけて

見ているものがどのようなものか映像として再現できるようにしました

実際に見ている映像

こんな映像を見ているだろうという推定の映像

えええぇ……ボンヤリとだけど合ってる感じがする!

さらにこの研究を進めて

見た映像を単語や文章で表現したりそのときに感じていることを推定することにも成功しました!

“A group of people standing on the beach” 「ビーチに立つ人々の集まり」

ふたりがいつも何を見ているのか

もう隠し立てできないドッキね……?

まさか本当にこんな技術がこの世に生まれていたなんて……

誰にでもわかっちゃうの?どうしよう……

そうですね実際にこの技術を誰が何のために使うのか?は大事な問題です

広告を見てその映像から人が何を感じるのかがわかれば……

その感覚を刺激するような映像を狙ってつくれるかもしれません

すごく欲しい…

また教え方を生徒ごとに工夫したり、理解を確かめながら授業をすすめることにも役立つかもしれません

わかりやすい!

ネコ元気?

元気だよ!

そして医療や介護の場では

思うように体が動かせない人の意思を読み取れるようなものがつくれないだろうか……

……と期待しています!

言語ではなく直接イメージで思うことを伝えられるようになったら……

異なる言語の人どうしでコミュニケーションできるようになるかもしれません

まるで翻訳機みたい!

現在のインターネット検索は知りたいことについての単語や文章を入力して目当てのものを探しますが…

「イメージ」で検索できるようになったら……

名前を知らないモノを思い浮かべるだけでそれが何なのかを見つけることまでできるかもしれません

あなたがさがしているものは「ヨウム」です

この鳥だ!

すぐにでも使えるようにしてほしいドッキ!

使ってみたい!

私はちょっと怖いわ~

装置を小さくできて脳活動をもっと速く調べられるようになれば実際に使える形に近づくでしょう

大事な脳を傷つけるわけにはいかないので現代の技術だとこういう形の装置になりますね……

なんかこういうの病院で見たことある気がする!

そして脳の血流のわずかな変化を測定するために結構長い時間じっとしていないといけない……

どれくらい細かい差をとらえられるか?という性能も将来ますます上がっていくと思いますが…

まだまだこれから研究が必要です!

へぇぇ~

残念ながらその技術はまだ完成しておらず地球の友だちふたりが何を見ていたのかは結局わからなかった。クヤシイ~!

でも、見た映像を言葉に変換 したりモノの名前や動き、その印象などが脳の中でどういう関係をもつのかという研究は思っていたより進んでいるようだ。

これからも観察を続けていきたい……

……と!できた!

すごい長文のレポートだよね…

あっそうだ!もしかして

こういうレポートも思い浮かべただけで送れるようになるんじゃない!?

そっか…!ドキドキする~!

地球人の「ヒミツ」に迫るすごい研究だったドッキ……!

レポートを送信して今回の任務完了!

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(全10ページ)

お話をうかがった先生

西本 伸志
(にしもと・しんじ)

大阪大学 大学院生命機能研究科 教授
情報通信研究機構 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 特別招へい研究員

1978年大阪府生まれ。2000年大阪大学基礎工学部飛び級中退。05年同大学大学院基礎工学研究科修了後、カリフォルニア大学バークレー校 ヘレン・ウィルス神経科学研究所で博士研究員、10年からは同研究所アソシエート・スペシャリストとして、自然な知覚・認知条件下における脳活動の予測モデルの構築をはじめとする脳神経情報処理の研究に従事。13年より情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター主任研究員。21年4月より現職。理学博士。

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