中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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  • 21世紀になってもまだガンの決定的な治療法が見つからないのはどうしてですか。

がんの原因が一人ひとり違い、最適な治療法も人によって異なるため

ヒトの体は、約60兆個の細胞で構成されています。これら沢山の細胞のうち、ごく一部の細胞で、何らかの原因で遺伝子が変化し、異常増殖するようになるのが、がん細胞です。
がんの原因は、一つではなく沢山あります。たとえば、喫煙や飲酒、運動不足や、偏った食事、ピロリ菌やさまざまなウイルス(例えばC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、T細胞白血病ウイルス)等の感染などがあります。もともとの体質(遺伝)に起因する場合もあります。また変異が起きた遺伝子の位置によって、がん細胞の性質が変わるため、一口にがんといっても、いろいろな性質のものがあります。

実は、健康な人でも、毎日多くのがん細胞が生じています。通常は、がん細胞を殺す仕組みが体内にあるため、がんは発病しません。しかし、年齢や環境によって、がんを殺す仕組みが弱まると、がんが発病します。
すなわち、がんが発病するかどうかは、がん細胞のできやすさとがん細胞を殺す体内の仕組みの強さのバランスによって決まります。

このように、がんの原因が一人ひとり違うことから最適な治療法も人によって異なることになります。これまでは一人ひとりのがん患者さんの原因を調べ、患者さん個々に最適な治療法(オーダーメイド治療)を見つけることが難しいことから決定的な治療法がありませんでした。

しかし、近年、患者さんのすべての遺伝子(ゲノム)を調べ、どこの遺伝子が変化してがんになったのかが、安価にかつ容易に分かるような時代に入っています。がんの原因が分かれば、治療法を開発しやすくなります。

1例ですが、アップル社の設立者であるスティーブ・ジョブズさんは、2011年に膵臓がんで亡くなったことはご承知かと思います。彼は末期がんがわかった時に自分のすべての遺伝子を調べて、ジョブスさんに合った最適の治療を行うことで、膵臓がんの再発患者としては異例の延命を実現しました。当時、がん治療のためにすべての遺伝子(ゲノム)を調べた人は、世界でも20人程度しかおらず、データ不足でした。しかし、わずか2〜3年でゲノム解析費用が劇的に安くなりましたので(約1/1000の費用です)、今後は多くの人の遺伝子が解析され、データとして蓄積されると、がんの決定的な治療法が、近い将来に見つけられるかもしれません。(update:2013.8.29)

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