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プラスチックの製造中に含まれるフタル酸エステルについて詳しく教えてください。製造過程で、どのようにフタル酸エステルがプラスチックに含まれるのですか? そもそもフタル酸エステルは体に害をもたらすのですか?
フタル酸エステルの健康へのリスクは懸念されるレベルではない
●プラスチックの製造工程
プラスチックの一般的製造過程を、以下に示します。
- (1)
- モノマーや触媒、溶媒、ポリマー、酸化防止剤等の添加剤等の使用する物質のレベルを確認。
- (2)
- 熱可塑性ポリマーの場合は、熱をかけられる押出成形機にポリマーを入れ、熔解させながら、酸化防止剤等の機能性を発揮させる添加剤を、計画比率に基づいて混合させる。棒状で空気内に出して冷やし、1cm位ずつにカットして、「ペレット」と呼ばれるプラスチック原料形状に加工。
- (3)
- 作製したペレットが仕様通りのものか、物性や仕様などを試験確認して合格であれば、規定の袋に入れて流通。
これが製造から流通までです。
次にフタル酸エステルの話をします。
●フタル酸エステルとは
フタル酸エステルとは
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- ベンゼン環に2つのカルボン酸があり、その酸にアルコールを反応させて、エステル化したもの。
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- フタル酸エステルの中で、最も有名で製造量・使用量が多いのは、2−エチルヘキシル−テレフタル酸(DEHP)。
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- DEHPは、ポリ塩化ビニル(塩ビ)の可塑剤として、柔らかい塩ビにするために使用している。
※ポリマー鎖の間に入り、結晶性を抑える。含まれる可塑剤(DEHP)の比率により、硬いものから柔らかいものまでコントロール可能。 - ・
- DEHPは、十数年前に「環境ホルモン」として指摘された。ただし、強い毒性があるわけではなく、内分泌かく乱物質として、赤ちゃんや妊婦さんは気をつける必要がある。
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- 欧州ではさまざまな環境ホルモン等については「REACH」等の化学物質規格で、規制をしています。
DEHPは、医療用プラスチックも含めて、これまで広く使われていますが、具体的に健康問題等が引き起こされたことはありません。さまざまな研究から、リスク評価としてヒト及び生態に対して「現状においてリスクは懸念されるレベルではない」と結論付けられています。ちなみに、我が国では現在、DEHP は脂肪性食品の容器包装材及びおもちゃへの使用が禁止されています。
(update:2016.3.28)