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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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マンガdeひもとく生命科学のいま ドッキン!いのちの不思議調査隊

第6話 角膜の再生

失われた臓器や組織の機能を、自分のからだの中の細胞やiPS細胞などを利用してもとに戻そうという再生医療の研究が進んでいる。なかでも目は、実際に医療の現場で役立てられていて、一番進んでいる分野の一つ。2022年1月に製造販売承認を受けた、口の中からとった細胞を使った角膜再生の研究を紹介するよ!

春…… DOKIDOKI星人は 「生え変わり」の 季節…… 耳が生えた よー!! このあいだは 耳が取れたって 大騒ぎ…… びっくり したよね~ DOKIDOKI星人は 目も生え変わるよ ええぇぇー 地球人は 目の生え変わり ないの⁉ じゃあ ひどい病気や ケガをしたら どうなるのぉ 治らなかったり 治療が難しい場合も あるんだよ でも近年は 「再生医療」という 研究が進んでいるん だって~! それ知りたい! ドキドキする~!

以前なら治らなかった 難しい目の病気を 細胞を新たに作り出す 「再生医療」で治そう! という研究を しています! そと ぞの ち え 外園 千恵 先生 京都府立医科大学 眼科学教室 教授 私たちの眼球の 一番外側にあって 黒目を覆っている 透明な膜が 「角膜」です いわゆる 「黒目」の部分 後房 虹彩 角膜 前房 鋸状縁 水晶体 硝子体 毛様体 強膜 脈絡膜 網膜 視神経 角膜から 入った光は 水晶体を通して 網膜に届き 視神経に その信号が 伝わっていきます(枠線下フキダシレイヤーに入っていました) 拡大… ものを見るときに 特に重要なのが いわゆる「黒目」 の部分です 角膜の構造 角膜上皮 基底膜 角膜実質 角膜内皮 異物の侵入を 防ぐバリアとして 働いている 真ん中は0.55mm 端っこは0.7mmと かなり薄いもの なんですよ

目の細胞も 髪や皮膚と同じで ある程度の日数で 入れ替わる 「ターンオーバー」 があります そのためには つくられる細胞の 「もと」になる細胞 「ステムセル」が 必要です 「幹細胞」は 分裂して自分と同じ細胞を 作る能力(自己複製能)と 別の種類の細胞に分化する 能力を持っています! 幹細胞 (かんさいぼう、ステムセル) 発生の幹(ステム) になることから この名前がつけられ ました 幹細胞がないと その部分の再生が できないんですが これが 病気やケガで 失われてしまう ことがあるんです え~っ! どうなって しまうん ですか?

目をケガしたり 何か異常があっても 白目のところなら どうにかなることが 多いのですが… 黒目のところが 傷ついてしまうと たいへん 危険なんです よくあるのが 学校の化学実験などで 目に薬品が入ってしまう 「化学外傷」です すぐに手当をする必要が ありますが それでも細胞が傷つき 幹細胞が失われてしまい 再生できなくなってしまう ことがあります 化学実験で 保護メガネをかけるのは このような事故を 防止するためです! 面倒とか 自分は大丈夫と思わず 保護メガネを 使ってくださいね その他のケガや病気でも 黒目が白目部分のような 膜に覆われてしまい 見えなくなることがあります 「黒目は光を通す窓」 と言われており この部分に邪魔なものが ないことが とても大事なのです

私が特に研究・治療しているのは 「スティーヴンス・ジョンソン症候群」 という難病です この病気は 原因が特定されて いないのですが だるい… 皮膚が ヘン…!? 感染症にかかったり 解熱鎮痛薬を 飲んだあとに 発症することが多く 最初は発熱や 皮膚のただれが あらわれ… 病院へ… ようすを 見ましょう はい… ひどくなって病院に運ばれても その見た目から 皮膚科のお医者さんの担当と なってしまうことが多く… そうしているうちに どんどん状態が悪化して 危険な状態になり…… はあはあ 目が…!! 気が付いたら 角膜上皮が失われて 失明してしまい 手遅れに…… 命が危ないという状況のなか 眼科のお医者さんを呼ぼうと いう発想にはなりにくいため こういうことが起きてしまう ことがあります こうなってしまうと 黒目部分の幹細胞が失われてしまい 以前の技術であれば これを再生することは不可能でした もっと 早く 気付けば…

これをどうにか 治したいと思い 最初は以前からの 目の治療方法である 「角膜移植」の 手術をしました でも 「角膜上皮」がいちど 失われてしまった黒目は がんばっても元には 戻らなかったんです 本人の細胞を 移植する方法を いろいろ試して 研究した結果… 口の中の粘膜の 細胞を培養して 角膜のかわりに使うと うまくいく……という ことがわかりました こういう ブヨブヨ してるところ かな…? その後 「口腔粘膜」と 赤ちゃんを包む 「羊膜」をもとに 「細胞シート」 をつくり…… 羊膜… お母さんのおなかの中で 赤ちゃんを包んでいる膜 実際の患者さんに 移植する研究を 続けて20年…… 2022年1月に 実際の治療に 使ってもよいという 認可が下りました! ドキドキ する~!

医療や生命にかかわる 研究をするとき それが法律に合っているかを 厳しく審査されます 細胞シートは まったく新しいもの だったので それは薬なのか? 医療機器なのか? …と 議論に時間が かかりました のちに 「再生医療」のための 「再生医療製品」という 分類が新しくつくられ そこにおさまりました 実際の治療で 使えるように たくさんの試験を 行いました 研究、治療、 大量の難しい 申請書類… これらすべてに 同時に取り組むのは とても大変でした それまでにないモノが この世界に現れると それについての法律や ルールがなくて それが良いものかどうか すぐには決められない ということがあるのか! 新しいモノを つくるって 大変なんだね! ドキドキ する~!

患者さんとご家族は 治療のための最新情報を 毎日さがして 情報を交換し合って よい治療法が登場するのを 待っているんですよ 一日でも早く 治療をして 少しでも 見えるように したいんです! でも そのための 準備をして いるあいだに 法律が変わったり 基準が変わったりして 目指すゴールが 遠くへ行ってしまう ……と いうような思いを 何度もしました 新しい治療方法や 薬の研究は そうやって何年も 何十年もかかったりする ことがあるんだね 知らな かった… 細胞シートが 使えるようになったので 現在ではもう治療ができる ようになっています 手術は順番待ちですが 治療法ができたというのは 大きな前進だと思います

みなさんの中にも 医師になって 研究や治療を したい人が いると思います この仕事をするには 学校の勉強ができて 成績がよければ いいというもの ではなく… 学校や普段の生活で 人との関わりを学び 鍛えていくことが 大事です! 係や学級活動 文化祭や体育祭 部活動…… 合宿や大会など みんなで困難を 乗り越えたり 人の集団をどう まとめていくかを 学べる機会が たくさんあります そこで学んだことが 将来の仕事で 周囲の人と協力し合い 大きな目標を達成する 力になるはずです 勉強や研究 さまざまな活動について いろいろな分野のことを まずはやってみる 合わないと思ったら 別のことに挑戦する そして 譲れないと思うこと 大事なことは あきらめずに がんばって突破して いってください

20年以上にわたる研究で 角膜上皮の代わりとなる細胞シートを開発! 失われた機能を取り戻す治療ができるようになり 再生医療を前進させることが できた! 新しいものを生み出すとき 研究そのものだけではなく 法律や研究倫理など 超えなければならないものが 多いところも大変らしい… DOKIDOKI星に 送るレポート… 完成~!!!! あ~目が疲れた 先生の言うとおり たくさんの書類は 大変ドッキ…… 目が生え変わるからと思って無理しすぎドッキ… これからは 気を付けよ~! いったい どうなってるの? 研究者になって 調べたい…

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(全10ページ)

お話をうかがった先生

外園 千恵
(そとぞの・ちえ)

京都府立医科大学 眼科学教室 教授

1986年 京都府立医科大学卒業。同附属病院研修医、京都市立病院研修医などを経て、95年京都府立医科大学大学院修了。99年同大学眼科学教室講師。2015年より現職。専門は角膜疾患の治療と研究。08年「再生医学による重症角膜疾患の新規治療法開発への戦略的研究」で第43回エルウィン・フォン・ベルツ賞1等賞。

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