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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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マンガdeひもとく生命科学のいま ドッキン!いのちの不思議調査隊

第7話 変身!~形と模様の不思議

子どもたちの夏の人気者がカブトムシ。ずんぐりむっくりした芋虫のような幼虫時代から(サナギ)を経て、オスは立派なツノが生えた成虫になる。特撮ヒーローもビックリの変身ぶりだ。このツノの形は、幼虫から蛹になるタイミングで現れるが、なんと、折りたたまれた平面がふくらんで立体になる「紙風船」に似たメカニズムなんだって!その様子は、まるでお祭りで売っている「吹き戻し」にそっくり!
ほかにも、生き物の形や模様は不思議がいっぱい。でもその背後に、共通したメカニズムがあるって知ってたかな?

夏休み! 飼育していた カブトムシが ついに成虫に…! カッコ いい~! ええっ!? これが カブトムシ なの!? このあいだ 見たときには 丸くてモゾモゾ していたのに… どうして!? 地球には 成長するにつれて まるっきりその姿を 変えてしまう 生物もいるのよ! ええ~!? なにそれっ ドキドキ する~!

私たちの研究室では 生物の「模様」や「形」が どんな法則でできるのかを 調べています 見事な変身を見せる生物… チョウやカブトムシなどの 完全変態昆虫 たしかに とても興味深い ですね! 近藤 滋 先生 こんどうしげる 大阪大学 大学院生命機能研究科 教授 あれと あれが おなじ生き物? 絶対に 信じない ドッキ‼ 成長するところを 自分の目で見てみる しかないですね 建物の裏に 住ませてもらって 観察をするドッキ! 卵から 観察すると 1年くらい かかるよ? 大長編漫画に なっちゃう! 幼虫から 観察を 始めたら どうかな?

というわけで 卵からかえり 幼虫になったものを 観察することに… 幼虫は 脱皮を 繰り返し サナギの 姿に…… そして羽化! おお~っ! カブトムシの 成虫になった‼ え~っ! 本当に姿が 変わるんだね! 大変身ドッキ‼ こうなると 知っていても 驚きね~!

カブトムシの姿は 急に変わるわけではなく その体の中で 少しずつ次の姿に 変わっていく準備が なされているようです 私たちの研究では 幼虫の頭部にある 黒くて硬い ヘルメットのような 殻の中身が どうなっているのかを 調べてみました すると 中には丸くて シワシワの 部分が… そして 幼虫のおなかを 指で押してみると なんと カブトムシの ツノの形に…! カブトムシのツノは 表面がこまかく折りたたまれて 膨らむとちょうど この形になるように できていることがわかりました お祭りで売っている ピロピロ笛のおもちゃに そっくりですね! ドキドキ する~!

どう折りたたんだら うまくこういう形に なるのか? 昆虫だけでなく エビやカニのような 脱皮する生物にも 同じような 「原理」が存在 するはずです シワの入りかたを よ~く観察してみると どうやら 「パターン」が存在 するらしい… ということが わかってきたので それを 数学的な方法で 調べたり再現したり できるようにしました どういう遺伝子をもつと どういう形になるのか ということも わかるようになったら こんな形に なるといいな という形をもつ生物を 思い通りに つくれるように なるかもしれません 巨大なツノで 金色の カブトムシ も…!? 脚が多い カニも…!?

模様と形の研究について 最初に大きな発見を 得られたのは 1995年のこと…… タテジマキンチャクダイの 模様の変化に チューリング・パターンという 法則を当てはめることが できるとわかったときでした チューリングは 「人工知能の父」と呼ばれる 天才数学者! 第二次世界大戦において ドイツの暗号を解読する 機械を作ったことで有名です 彼は 「動物の体の模様は波が作る」 という説を提唱しました アラン・マシスン・チューリング (Alan Mathison Turing) (1912-1954) チューリング理論の数式で できる模様はたしかに 実際の動物にそっくりです この研究によって このような 生物の模様については チューリングの理論を 当てはめていっても いいだろう……と 証明できたんです

さらに 不思議な模様や形をもつ 生物全般についても 興味がひろがりました 先生は おもしろい形の 貝を集めているん ですね! すごい模様 だなあ…… さまざまな貝殻の形を シミュレーションで 再現できる コンピュータプログラムも 作ったんですよ 海の生物「オタマボヤ」は えさを集めるための 「ハウス」と呼ばれる薄い膜を 上手におりたたんで 3-4枚持っていて 破れたりして 使えなくなると 新しいものに 取り換えています 大きな袋を どうやって小さく 折りたたんで 運んでいるのか? かなり興味深いです

よく 「模様は遺伝で決まるん じゃないの?」と 言われることがありますが おもしろい 模様や形は 生物だけではなく 鉱物や 岩石…… 雲の渦…… そして 砂漠の模様などにも あらわれます だから模様や形は 遺伝子からうまれるもの というばかりでは ないはずです ああっ… そうかあ~! ドキドキ する~!

たとえば とある生物について調べる… というような研究は 多いと思うんですけど こうやって 自然界のなんでもについて 広い範囲にわたって ものの性質を見ようという 研究のやりかたも あるんですね…! ドキドキ するね~! この研究を続けていくことで 生物学すべてに関係するような 大きな発見や まだ見たことがない おもしろい発見が 得られるかもしれない… そう思いながら いろいろなものに 出会っていきたいと 考えています

DOKIDOKI星から来たぼくは 「地球には成長するにつれて姿をすっかり変える 生物がいる」ということに驚かされた! そしてさまざまな模様と形をもつ生物たち…! 近藤滋先生はタテジマキンチャクダイの 模様の研究から、生物の模様のパターンは 「チューリング理論の数式」で説明できる という発見をしたらしい! 数学による研究と、遺伝学による研究 両方が進めば思い通りの模様と形をもつ 生物がつくれるかもしれない。 それにしても 僕たちのまわりには いろんな模様や形が あるんだね! 今回の話を 聞いて以来 あの形ふしぎ! あの模様おもしろい! ……って感じで 何を見ても 気になるように なっちゃった! 「研究してみようかな?」 という気持ちは こういうところから 始まるのかもしれないね! 今回も DOKIDOKI星への レポート送信完了!

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(全10ページ)

お話をうかがった先生

近藤 滋
(こんどう・しげる)

大阪大学大学院生命機能研究科 パターン形成研究室 教授

1988年3月 京都大学大学院医学研究科博士課程修了。スイス・バーゼル大学バイオセンターでのポスドクの後、京都大学医学部講師、徳島大学総合科学部教授、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター、名古屋大学大学院理学研究科教授などを経て、2009年8月より現職。魚の縞模様、ヒレや骨、カブトムシの角など動物の形ができる原理を、分子生物学と数理シミュレーションを駆使して解明している。主著に『波紋と螺旋とフィボナッチ』『いきもののカタチ-多彩なデザインを創り出すシンプルな法則』。
パターン形成研究室:https://www.fbs-osaka-kondolabo.net/

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