この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第4回 脳の発生の探求から、心の病の予防・治療までも視野に 東北大学大学院医学系研究科 大隅典子 教授

この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」 第4回 脳の発生の探求から、心の病の予防・治療までも視野に 東北大学大学院医学系研究科 大隅典子教授

Profile

大隅典子(おおすみ・のりこ)
1988年東京医科歯科大学大学院歯学研究科を修了、顔がどのようにできるか、顔の発生に興味を持ち、やがて脳の発生、神経の発生を分子発生学の観点から研究するようになる。96年国立精神・神経センター神経研究所室長を経て、98年東北大学大学院医学系研究室教授に。専門は発生生物学、分子神経科学。2005年より科学技術振興機構の戦略的創造研究(CREST)の代表者として「ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明」に従事。東北大学脳科学グローバルCOE 拠点リーダー。歯学博士。著書に「神経堤細胞」(東京大学出版会)、訳書に「心を生みだす遺伝子」(岩波書店)など。

大隅研究室HP http://www.dev-neurobio.med.tohoku.ac.jp/
[ブログ]大隅典子の仙台通信 http://nosumi.exblog.jp/

profile
生命がどのように発生するのかを探る発生生物学は、新しい発見が次々に報道されるスリリングな研究分野のひとつ。大隅典子教授は、脳がどのように発生し、形成されていくのか、そのプロセスに遺伝子がどう関係しているのかなどをテーマとして研究している。脳の進化やそれを司る遺伝子と精神機能の研究から見えてくるものとは…。

研究者の両親の影響を受けて育つ

───子どものころから研究者になろうと思っていたのですか。
高校2年の夏、逗子の自宅の前で

高校2年の夏、逗子の自宅の前で

私は両親が研究者の環境で育ちました。父はクジラ、母は酵母菌を研究していました。家にはクジラのひげなどが置いてあり、ときおり父はクジラがオキアミをどんなふうに吸い込むのかを話してくれたりしました。両親の姿を見ていると、どうも研究者になると、学会というものが年に何回かあって、海外にも年に1回くらい行っているらしい。当時はまだ海外に出ることが一般的な時代ではなかったから、そういう生き方もいいかなって子ども心に思っていたんです(笑)。

───どんな子ども時代を過ごしていたのでしょう。

私は一人っ子で、家には祖父母が一緒に住んでいましたが、祖父母の負担にならないように1日おきにピアノや絵などの習いごとに行かされていました。本は好きでしたね。図書館にある本は小説だろうが図鑑だろうがかたっぱしから読んでいました。でも、本ばかり読んでいるいわゆる内向的な性格ではなく、小学生のときには学級委員もやっていました。

───中学に進んでからはいかがでした?

通っていた中学校は新しい教育の方法を考えながら授業をする学校でした。いろいろな先生がいらっしゃいましたが、中でも国語の先生がとても魅力的だったのです。長い文章を要約するには2つの方法がある。ひとつは、重要と思われる単語にマーカーで線を引いてそれを集める方法と、もうひとつは逆に不要と思われる個所に線を引いて削っていく方法だなんて教えてくれました。もともと本が好きだったこともあって、自分でお話を作ってそれにマンガタッチの挿絵を入れてみたり……。
それでも、文系の学部に行こうとは思わなかったですね。進学するなら文科系ではなく、両親と同じように、理系に進もうと思っていました。

───生命についての関心は?

生き物は好きでしたよ。でも昆虫は好きじゃなかった。系統の面からいうと鳥類以上(笑)。よく冗談を言うのですが、父はクジラ、母は酵母菌の学者だったから私はその中をとってマウスを研究しているって(笑)。生命についての興味は本や両親の話を通じて得た方が多かったと思います。心理学にも興味がありましたが、ようやく遺伝子を同定することができるようになった時代ですから、やはり理系の研究がしたいと思っていました。

───もし、生命科学の研究者にならなかったら?

なりたかったのは、建築家。でも構造計算をしなくてはならないと聞いて、それはちょっと面倒くさそうって思いました(笑)。それならアナウンサーか雑誌の編集者がいいなと思ったり……。それと、料亭のおかみさん。おかみさんって、総合的なプロデューサーみたいで、すごくかっこよく見えたんです(笑)。

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