この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第14回 多くの人との出会いが、研究生活を豊かにしてくれます。 独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 組織形成ダイナミクス研究チーム チームリーダー 倉永 英里奈 先生

研究発表前に大変な事態に!

───博士課程ではどんな研究生活を送ることになったのですか。
写真:2006年「Cell」に論文が掲載されたときのお祝い。右が三浦先生

2006年「Cell」に論文が掲載されたときのお祝い。
右が三浦先生

写真:遺伝学的解析に優れた小さな生き物“ショウジョウバエ”とともに

遺伝学的解析に優れた小さな生き物“ショウジョウバエ”とともに

私の研究生活は、つくづく人との出会いに恵まれていると思います。お世話になった先生方や研究者仲間を挙げればきりがありません。特に、博士課程から卒業後も10年以上研究指導していただいた三浦正幸先生との出会いは衝撃的でした。
三浦先生に初めてお会いしたのは、阪大で行われた研究会のときでした。ショウジョウバエを使った分子生物学研究について、とても熱心に、魅力的に語ってくださる様子に一目ぼれして、「先生と一緒に研究したいです!」って、気づいたら口走っていました。私がなりたいと考えていた研究者のスタイルがそこにあったからなんです。それと、それまで私は、ラットやマウスなどを使った生理学や組織学をメインの研究にしていたので、分子生物学の観点からの解析が足りなかった。そこを深めたいと考えました。
ショウジョウバエをモデル動物として使い、遺伝子レベルで生命現象を説明できることの素晴らしさに衝撃を受け、また感動しました。ショウジョウバエのふるまいはエレガントでかわいくて、私はこの小さな生き物に夢中になりましたね。

───当時の研究生活で何か思い出に残ることはありますか。
写真:東大ライカイメージングセンター設立記念シンポジウムでの発表の様子

東大ライカイメージングセンター設立記念シンポジウムでの発表の様子

そうですね、博士課程で初めての研究発表は、理化学研究所脳科学総合研究センターでのリトリート(研究成果報告会)でした。若手の研究者が何人かピックアップされ、私もその一人に選ばれて参加したのです。
15分くらい英語で研究について聴衆の前で発表するのですが、参加者の中にはノーベル賞を受賞された利根川進先生、脳研究の権威の伊藤正男先生など、実にそうそうたる方々がいました。
今でもプレゼンは苦手なんですが、そのときはさすがに緊張のあまり直前になって気持ちが悪くなり、トイレで吐いてしまったんです。
そのときに強く印象に残っているのが、緊張で真っ青になっていたとき、隣に座っていたカナダ人の研究員に調子はどうだって聞かれて、「とてもナーバスで、できそうにない」って弱音を吐いたら、彼はあきれて、「君はラッキーなんだよ、君の仕事のおもしろさをたくさんの人と共有できるんだから。楽しんでおいで!」って言ってくれたこと。今でもプレゼンで緊張しそうなときは、この言葉を思い出します。

───研究の楽しさって、どんなところにありますか。

予想していなかったことを見つけたときですね。最初は結果が出ていないとがっかりするのですが、そこに何かあるかもしれないと考えなおして、新たな発見をしたときは研究者冥利に尽きるという感じです。その成果を一人占めにしないで、研究者仲間とディスカッションし、共有することで楽しさが倍増するんです。 研究者仲間とディスカッションすると、自分では見えていなかった違った角度から見てもらえたり、研究のヒントをもらうこともありますね。自分ではそんなにたいしたことではないと思っていることをみんながおもしろいと言ってくれると、研究のモチベーションも上がって、ようしやるぞってファイトがわきますよ。

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