フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」 第4回 タンパク質の形と機能の関係は? 東京理科大学基礎工学部生物工学科 三浦 成敏 教授インタビュー タンパク質の構造と機能の研究は、生命現象の解明につながります。

ヒトが使っているタンパク質は約10万種類

───タンパク質の基本的な形を教えてください。

アミノ酸は炭素原子にアミノ基、カルボキシル基、水素原子、そして側鎖(そくさ)という原子団が結合したものです。二個のアミノ酸の間でアミノ基とカルボキシル基が結合した状態をペプチド結合といい、ペプチド結合が数十以上連なって特定の立体構造を持つようになったものがタンパク質です。
タンパク質の側鎖を除いた部分(これを骨格と呼びます)は同じ単位の繰り返しでできています。この周期性を反映してラセン状の構造やシート状の構造が作られ、多くのタンパク質に共通に見られます。
また、20種類のアミノ酸の側鎖はさまざまな大きさや化学的な性質(水に溶けやすいさの違いや正負の電荷など)を持つためにいろんな化学環境に適応できます。タンパク質の表面は水と接しているので水に溶けやすい側鎖を持ったアミノ酸があらわれやすく、逆に内部には水に溶けにくい側鎖を持ったアミノ酸が集まってきます。そのため、どんな性質のアミノ酸がどんな順番で並ぶかによって、さまざまな形のタンパク質ができていくのです。

アミノ基・側鎖・カルボキシル基
アミノ酸残基・ペプチド結合
───タンパク質は約10万種類といわれます。20種類のアミノ酸の組み合わせを考えた場合、半分の10通りを10個つなぐ組み合わせだけでも10の10乗で10兆種類できるはずです。

ランダムにアミノ酸を並べたらものすごい数になりますが、進化の過程で不要な機能は排除され、ヒトにとって必要な機能だけが選択されていったのだと思います。
なぜアミノ酸の数が20種類なのか、ほんとうのところはわからないのですが、20種類のアミノ酸を組み合わせることで、性質の違ったタンパク質を効率よく作り出しているわけです。

───タンパク質の構造はどのくらい判明しているのですか。

多くの研究者が、遺伝子情報やタンパク質の配列・構造に関する研究に取り組んでおり、その情報は日々蓄積され、巨大なデータベースが米国や欧州、日本などで構築されています。すでにタンパク質の立体構造が登録されているものは約6万種類にのぼっており、インターネットで公開され、研究者が大いに活用しています。
ただし、データベースに登録されているからといって、それらの立体構造と機能の関係がすべて判明しているわけではありません。タンパク質の構造は、ある程度カテゴリーで分けることができ、独立的な立体構造をしているのは数千個といわれています。しかし、その数千個の構造や意味にはまだまだ不明なところがたくさんあり、さらに研究していかなければ全体が見えてこないといえます。

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