フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」 第4回 タンパク質の形と機能の関係は? 東京理科大学基礎工学部生物工学科 三浦 成敏 教授インタビュー タンパク質の構造と機能の研究は、生命現象の解明につながります。

物理、化学から生命現象を理解する

───先生はなぜ、生命科学の研究者になろうと考えたのですか。

高校生のときから物理・化学が好きで、生物のシステムはすべて物理や化学で説明できるという説にひかれました。大学に入ってからは数理、物理の理論から生物を捉える生物工学を学ぶことにしました。このように物理的なアプローチからタンパク質の研究に入っていったので、いわゆる生物学からタンパク質を研究している人とは少し違った入り方をしています。

───この分野の研究はどういったものですか。

私の研究は、生命科学の中でも生物物理学という領域で、一言でいえば、生物を物理学との関係で捉えようとするものです。生物物理を学ぶ際には、物理学から入っていくコース、コンピュータを使った情報工学から入っていくコースなどがありますが、いずれにしても、物質や物性を突き詰めていけば、生命現象も理解できるという観点に立って研究します。
大学院時代に私が学んだ研究室の先生は、金属と生命について研究していて、私も生物はどのように金属を利用するのかについて興味を持ちました。というのは、ヒトのからだのタンパク質には、ヘモグロビンのように鉄(金属)を取り入れたものがあるし、鉄や銅、亜鉛、マグネシウムなどの金属イオンを持った金属酵素もたくさんあります。
動物は植物に比べて多消費型のすごく効率の悪い生き物で、エネルギー消費が高いから、からだの各組織に効率よく酸素を運んでやらなければならない。そのために酸素分子と結合しやすい鉄原子を取り込んだヘモグロビンが必要になったのだと考えられます。また、金属酵素は、細胞の中のミトコンドリアが生命活動に必要なエネルギーを作るときに利用しているものです。こうして見てくると、生命がいかに上手に金属を利用しているのか、研究を続けていると今も驚かされるのです。

───生物物理学を学びたいと考えた場合に、中高校生に必要なことはなんでしょうか。

生物を見ていると、タンパク質なら炭素や酸素、窒素などの物質の性質をいかにうまく利用しているかがわかります。また、今お話ししたように、たとえば生命と金属とは密接な関係を持っています。生命を理解するためには、物質がどんな性質をもっているのかを、物理や化学の面から理解する必要があります。
生物の勉強には物理や数学はいらないと思う人もいるかもしれませんが、中高校生の頃から、物理、化学、数学などの基礎科学をしっかり勉強しておいてほしいですね。

(2010年2月4日取材)

PAGE TOPへ
ALUSES mail