フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」第2回 細胞の不思議 ヒトのからだができるまで 東京大学大学院 総合文化研究科 浅島 誠 先生 インタビュー からだの器官づくりを促すアクチビンを発見!

卵からオタマジャクシが発生する不思議を解明したい

───発生のメカニズムに興味をもったのはいつごろからなのでしょう。

子どものころは新潟県の豊かな自然の中で育ちました。春になって田んぼに行くとカエルの卵が生まれています。卵はやがていっせいに孵ってオタマジャクシになり、カエルに成長します。この変化を見ていると、どうしてこんなにうまい仕組みになっているのかを知りたかった。
中学・高校のとき、生物の先生がいきいきと生命について話してくれたこともあって、大学では生物学を専攻しようと思いました。

───誘導物質の研究をするきっかけになったのは?

大学を卒業するころ、シュペーマンの「発生生理学への道」という伝記を読んで感動し、シュペーマンが見つけられなかった誘導物質を発見したいと思うようになったのです。東大の大学院博士課程を修了してから、ベルリン自由大学分子生物学研究所の研究員になったのですが、そこでは研究室全体で誘導物質の研究をしていました。
研究にはイモリの卵が必要ですが、私はまだ若く実績もないから卵を研究素材として使えるのは午後7時ころ。研究室の先輩方が使ったあまりをやっと使わせてもらえるわけ(笑)。
でも、私の持っているタンパク質を定量化する技術が認められて、しばらくすると午後には卵がまわってくるようになった(笑)。
その後日本に帰ってからも、横浜市立大学で誘導物質の研究を続け、やっとアクチビンを発見できたときは、本当にうれしかったですね。

───アクチビンを発見する自信はあったのでしょうか。

なにしろ、世界中の生物学者が50年間も研究しても誘導物質がなんであるのかはわからなかったのですから、私が研究を続けていると、先輩教授や科学者仲間からは「もうやめないと、研究者として一生を棒に振る」とアドバイスされましたね。実際、当時、日本では誘導物質の研究をしている研究者はほとんどいなかったですね。
私も、誘導物質を発見できる自信はなかったのですが、この問題を解決しない限り、生物学は発展しないという思いで研究に没頭していきました。

───アクチビンの発見はどのような意味をもっているのですか。

ヒトとカエルの器官はほぼ同じ構造を持っており、ヒトのからだの器官をつくるときにもアクチビンの作用は同じように働くと考えられます。未分化細胞にアクチビンを働きかけることによって、将来的に血液、心臓、膵臓などのヒトの器官をつくることができれば、再生医療に大きな貢献ができると思います。

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