───生命科学の研究者になるには、どんな資質が必要と思われますか。
粘り強く研究しなければ成果が出ないので、粘着性の気質が必要でしょうね。私がMuse細胞を発見できたのも、捨てようとした細胞をもう一度確認したから。最後まで諦めずにやらなければだめ。それと、実験をしていて、「あれっ?」とか、「変だな」とかを感じ、目の前で起こっている現象を見逃さない能力でしょうか。
───先生の研究室にはどんな学科を専攻した方がいるのですか。
さまざまですよ。工学部、保健学科、基礎工学、農学部、医学部など、バラエティに富んでいます。医療の現場で患者さんを治すとなると医者にならなければだめだけれど、研究だったら、幅広い学科でも大丈夫ですよ。
───中高校生にメッセージがありましたら。
私は大学受験をするときに、予備校にも、塾にも行っていません。全部独学で勉強しました。受験というのは、答はもう決まっていることを勉強することですね。それなのに、他人から解答を導くためのノウハウまで教えてもらっているようでは、とてもクリエイティブな仕事はできません。
私たちの研究は、必ずしも答がないもの、道筋のないものを、自分で道筋をつくり、答をつくりださなければなりません。答がないから、方法がないから研究するんです。中高校生のころから、他人に頼らず、自分で解決の道を探ろうという姿勢を持つことは、研究者を目指すなら、ぜひ必要なことでしょうね。
トラブルに直面したときも、なぜうまく行かないのか、どうしたらいいかを常に考えていく。そのための想像力も大切にしてください。
(2010年12月2日取材 2011年1月公開)