この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第3回 組織工学の手法で、気管再生に取り組む ハーバード大学 組織工学・再生医療研究室 小島宏司 准教授

英語ができなくても、アメリカで勉強するチャレンジ精神を大歓迎

───日本とアメリカの研究体制で違うところがありますか。

よく、アメリカでは人間関係がドライで、目上の人だろうと先輩だろうと気にすることはなく、自分の考えをどんどん主張するという話を耳にします。でも、それは違うと思う。もちろん自分の考えを主張することは大事にされますが、アメリカでもやはり、優れた研究者はちゃんと先輩、上司に対しては礼儀をわきまえて接するなど、人間関係を大切にしますよ。
ただ、アメリカではちゃんとした業績を残せば、たとえ若くてもしっかり評価してくれます。たとえば、私がバカンティ教授に認められた技術があると、世界的に著名な教授でも、その分野の技術について私にていねいに質問してくるのです。このあたりはすごいですね。
もっとも、日本の技術はアメリカに劣らず優れていて、ティッシュ・エンジニアリングに使う生体素材などでは日本の企業の材料が圧倒的に優れています。

パーティにて。向かって左がチャールズ・バカンティ。右がやはり再生医療で世界的に有名な兄のジョセフ・バカンティ

パーティにて。向かって左がチャールズ・バカンティ。右がやはり再生医療で世界的に有名な兄のジョセフ・バカンティ

───最後に、中高校生へのメッセージがありましたら。

自分が好きなこと、興味のあることは、誰がなんと言おうともがんばってやり続けることが大切です。するとチャンスは必ず巡ってくるものです。とにかくやってみる。手を動かしてみる。実験でもそうですが、やっていくうちに見えてくるものがあるんです。
ここで重要なのは、うまくいかなくて失敗したときに得るものがものすごく大切だということ。手を動かさないと絶対に失敗はありません。いまはインターネットによって情報をたくさん集めることができますが、インターネットの情報は誰もが手に入れることができる情報です。自分で見て聞いて集めた情報や失敗したときに得た経験はあなた自身のものだということを忘れないでください。
それから、中学、高校で習う主要科目はちゃんと勉強しておくといいですよ。どんな職業に就こうが、必ず役に立ちますから。
もし英語を勉強するなら、アメリカで実際に使われる英語は、とても早口ですから、早口の英語に慣れておくこと。また、一つでもいいから10分程度の英語の演説を丸暗記すると役に立つと思います。よく大統領の演説は文法も内容もよく練られていてよいお手本になると言われています。全く同感です。しかし 僕は挑戦しましたが、 面白くなくて挫折しました。自分の好きな分野からでもよいと思います。僕なんかはテニスプレーヤーのマッケンローのインタビューの会話を覚えました。もちろん、英語ができなくても、アメリカで勉強することは大変有意義なことだと思います。どうか、おめず臆せずチャレンジしてください。

世界の各地からハーバード大学医学部に学びに来る(後列中央が小島先生)

世界の各地からハーバード大学医学部に学びに来る(後列中央が小島先生)

(2009年12月16日取材 2010年1月公開)

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