中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

“「波」が動物の模様をつくりだす!

近藤先生の考え方はこうだ。
「生物のからだの模様は、受精卵や胚の中にすでにある情報からつくられるのではなく、“波”がつくりだすものなんです。『えっ、波が?』って、驚かれるかもしれませんが、広く自然界を見渡してみると、波はいたるところにできています。砂丘の風紋、鳥が泳いだあとにできる等間隔の波、秋空を見上げれば、鰯雲がきれいな波模様をつくっているのが見えるでしょう。とりあえず、『波は結構起きやすい』とそう考えてください。それがこれからお話しする理論を理解する上で非常に重要だから」

生物のからだで波が生じるといきなり言われても、いまひとつピンとこないが・・・・・・。
「たとえば神経細胞同士の情報伝達や細胞間コミュニケーションといった細胞間の反応や化学反応などによって周期的な振動が起こり、それがまわりに伝われば波がおきるのです」

実は、20世紀初めにこうした現象がおきることを数式で解き明かしたイギリスの天才数学者がいた。アラン・チューリングという天才科学者である。彼は“2つの物質がある条件のもとで、反応し合いながら広がるとき、そこに物質の濃淡の波ができ、その波が生物の形や模様をつくりだす”と述べ、それを「反応拡散系」という原理にまとめて数式で表した。
「この数式でつくり出される模様は『チューリング・パターン』と呼ばれますが、コンピュータ・シミュレーションで描き出すと、動物の模様にそっくりな縞模様が出現するのです」

実際にチューリング理論の数式を使ってつくりだされた模様と、動物のからだの模様とを見比べてみよう。

それぞれの動物によく似たチューリング・パターン

それぞれの動物によく似たチューリング・パターン

◎自分でも、チューリング・パターンでいろいろな模様がつくれるよ。近藤先生の研究室の反応拡散シミュレーションページに詳しい解説がある

なるほど、チューリング・パターンによって出現した模様はシマウマやヒョウ、キリンの模様にそっくりだ!

もちろんコンピュータ・シミュレーションで描き出された模様と動物の模様がそっくりだからといって、動物の模様がチューリング理論に基づいているという証明にはならない。いったいどう証明したらよいのか、動物の模様の秘密はチューリング・パターンにあると確信した近藤先生のトライアルの日々が始まった。

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