フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」 第5回 DNA複製のプロセスは? 東京理科大学大学院 科学教育研究科 武村 政春 准教授インタビュー DNAで人間のすべてが決まるわけじゃない!

なぜ、トリは空を飛べて、ヒトやネコは空を飛べないのか

───本編アニメーションでは、「なぜ、トリは空を飛べて、ヒトやネコは空を飛べないのか」という疑問が出されていましたね。

この地球上に生命が誕生したのはいまから約38億年前。鳥類もヒトやネコなどの哺乳類ももとは同じ遺伝子を持った生物だったのです。その後、生物はDNAの突然変異と自然選択を受け、長い時間をかけてさまざまな生物に枝分かれし、進化してきました。
トリ(鳥類)の祖先は、恐竜の中の竜盤目から枝分かれしたもので、最初、羽毛の機能は飛ぶことではなく体の保温だったようです。その後、羽毛は立派になり、木にのぼるときに便利に使ったりしながら、やがて空を飛ぶ機能をもつようになったと考えられます。

───トリのからだにはどんな変化があったのですか。

身体の骨格が小さくなり、その結果浮力が上がるとか、骨をスカスカにして軽量化を図るなどの変化があったのでしょう。試しにトリの骨を持ってみると、かたくて丈夫な割には軽いことに気がつくでしょう。こうしたからだのサイズや質の変化が、空を飛ぶという機能が獲得されたときに起きたはずです。

───ヒトやネコはそうしたからだの変化は起きなかったのですか。

生物種が生き残るには、さまざまな選択肢があり、ヒトは手を羽として発達させ空を飛ぶのではなく、物をつかんだり道具を編み出すのに使うようになりました。これが、脳が発達する原因の一つになったと考えられています。ネコはトリを捕まえることができるほどの敏捷性を獲得するなどの方法で、それぞれ生き残ったのでしょう。
ある環境が変化したとき、その変化に対応できる遺伝子セットをもった生物が生き残っていくのですが、それらの変化はある一定の方向性があるというよりは、ランダムに起きた突然変異の中で、環境に有利だったものが選択されていった結果だといえます。こんなふうに考えると、ヒトが進化の頂点に立って一番エライという考え方は誤りだといえますね。

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