フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」 第12回 神経幹細胞の発現に関係する遺伝子「MUSASHI」を発見! 慶應義塾大学医学部生理学教室 岡野 栄之 教授 インタビュー 中枢神経系の発生と再生の研究を通じて臨床の現場に活かしたい。

教科書をおろそかにせず、さらにその上を目指せ

───研究をする上で大切なことは何だと思われますか。

アメリカにわたってショウジョウバエの遺伝子を8000匹も調べたとき、素早い運動神経と体力が研究には必要だと痛感しました(笑)。
学生時代に医学部体育会バレー部に所属し、週2、3回練習したり、医学部のテニスサークルで主将を務めたりしましたから、体力には今でも自信がありますよ。つらいときに気合を入れる、朝まで飲み続けるといった体育会系のノリは、メリハリをつける意味でも今の研究生活に役立っています。
それから、自分の専門以外の分野でどんな動きがあるのかは、ウォッチしておくこと。たとえば、動物実験と違ってヒトの脊髄に神経幹細胞を移植した場合など、神経細胞がどのような状態になっているか経過を見るために脊髄を切って調べるわけにはいかない。PETやMRIなどの画像診断、イメージング技術がどれだけ進んでいるかなどを把握しておくことが必要です。もうひとつ、iPS細胞や神経幹細胞による再生医療や移植治療は、生命倫理の問題を含んでいます。倫理問題などにも目を向ける視野の広さが大切だと思います。

───中高校生にアドバイスをお願いします。

高校時代、生物学の授業で習ったハンス・シュペーマンの「オーガナイザー」に興味をひかれたけれど、それは今私が行っている発生学にもとても役に立っています。興味を持ったことは、とことん調べたりすることが大事です。学校の授業や教科書をおろそかにせず、しかも、その内容を鵜呑みにせずに、疑問に思ったり、自分の頭で考えたり、さらにその上を目指して勉強してほしいな。

(2011年6月9日取材)

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