フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」

医工連携による革新的な技術開発に期待が高まっている

───これからの研究目標を教えてください。

リハビリに関して、足の障害に関しては、装具歩行などによってかなり補えるのですが、手指の障害の場合は回復が非常に難しいとされてきました。たとえば、脳卒中で倒れた患者さんのうち、装具などの助けを借りて歩行が可能になる人は60%いるのに対して、手が実用的に使えるようになるのはわずか20%と言われてきました。この現状を何とかしたいという思いで、私はこれまで手指に関係するBMI リハビリテーションを中心に行ってきたのですが、これからは、それと並行して、足に関するBMIリハビリテーションにも取り組みたいと考えています。
また、これまでは、脳の運動感覚野と手の筋肉を結ぶ1対1のBMI リハビリテーションでしたが、脳のネットワークを活用した複合的なBMIリハビリテーションを手がけたいと考えています。

───慶應義塾大学での研究体制はどうなっているのですか。

ここ5年間、理工学部と医学部がとてもよい形で医工連携して、医学とテクノロジーを統合して革新的なものを生み出そうとみんな頑張っています。
もっとも、理工系の学生はともすると先進的な技術を開発したがるのですが、リハビリテーション医学では、必ずしも超先進的な技術が必要となるわけではなく、ローテクからハイテクまでバランスよく開発し、患者さんがそれぞれの障害レベルに合わせてリハビリできるようにしていくことが大切です。理工学部の学生たちも、そうしたリハビリテーション医学の考え方を身につけ、また、患者さんの症状を見ながらコミュニケーションをとることができるようになってきました。

───最後に中高校生にメッセージをいただけますか。

私は、中高校生の頃、一つの枠に縛られ、はめ込まれるのが嫌でしたから、若い諸君にも「枠から飛び出せ」と言いたいですね。もちろん、一つのことをしっかり勉強することは必要ですが、あまりにも枠にこだわりすぎると、外の世界のことが分からなくなることがあります。
それと、何歳になってもチャレンジャーでいてほしい。私は50歳を過ぎてもやりたいことがたくさんあって、医学だけでなくいろいろなことに挑戦しています。皆さんも、もし若いときに自分の夢に挑戦できなかったとしても、いつかその夢にチャレンジしてほしい。
最後に、リハビリテ―ション医学の分野は、まだ研究者、専門医の数が足りません。この分野のパイオニアになるつもりで、リハビリテーション医学の扉を叩いてみませんか。

(2013年8月19日取材)

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