フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」

免疫の研究を臨床に役立てたい

───河本先生が血液内科を選んだ理由を聞かせてください。

京都大学の医学部を卒業して内科医として3年間研修を受けたのですが、血液内科は白血病、リンパ腫、骨髄腫など、命にかかわる病気で苦しんでいる患者さんが多く、血液内科分野の重要性がひしひし伝わってきました。ですから、血液内科の医師となってこういう病気に取り組みたいと考えるようになったのです。

───血液内科の臨床医をやめて研究者になったのはどうしてですか。

実際に臨床医として患者さんを診ていると、多くの患者さんの命を助けられない現実にぶつかり、無力さを感じてしまったのです。それなら、マウスなどを相手にして、生命現象の解明をテーマにした基礎研究をする方が自分に向いているなと。
しかし、いま取り組んでいるT細胞由来のiPS細胞を使ってキラーT細胞をつくり、がん細胞をやっつける研究は、白血病の治療に応用できる可能性も高いのです。もともと臨床医として働きだしたわけだし、こういう機会に恵まれたことで、医者魂がふつふつとわいているところです。

───免疫を研究する面白さはどんなところにあるのですか?

免疫はすべての生き物が持っているものですが、私たちのように複雑な免疫システムを持っているのは、サメやエイなどの脊椎動物であって、無脊椎動物のような下等な生き物は、高度な免疫システムは存在しません。
私たちのからだをつくっている細胞の種類は200種類とか300種類とか言われますが、免疫細胞はざっと数えただけでも50種類くらいはあります。

───そうした数多くの免疫細胞がお互いに連絡を取り合って病原体に立ち向かっているのですね。

ええ、免疫細胞はお互いに連絡を取り合って細胞社会をつくっています。ある病原体が入ってくると、免疫細胞たちはそれに合わせて動き回り、様態を変え、何十種類もが複雑にからみあって病原体に対応していきます。形態や機能が変わる様子は、まるでポケモンが進化するみたいな感じですよ(笑)。
現在、原因が分からない特定疾患の難病のほとんどは、自己免疫疾患系の病気です。それだけに、研究者としてはやりがいのある分野ともいえるのです。

PAGE TOPへ
ALUSES mail