フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」

漫画家志望で、ロックに夢中。遊び心を忘れないで

───河本先生は、ご自身のwebサイトでも、免疫について解説した書籍でも、実に分かりやすいイラストを描いておられますね。

漫画を描くのは子どものころから好きで、いつか漫画家になりたいと本気で思っていました。大学院2回生のとき、26ページの作品を作って「ビックコミックスピリッツ」の編集部に持ち込んだら、「スピリッツ賞に応募という形で受け取りましょう」と言ってくれて、その作品で奨励賞をもらいました。その同期の奨励賞受賞者に「いいひと」「最終兵器彼女」などの作品で知られる高橋しんさんがいます。
ただ、作品を仕上げるのはものすごく大変で、奨励賞をもらった作品でも、完成までにまる1カ月、朝から晩までかかってしまいましたし、描いているうちにプロの漫画家との画力の差を感じて、「これじゃ、あかん」と漫画家になることは断念しました(笑)。

1990年11月、スピリッツ賞の奨励賞を受賞した作品

1990年11月、スピリッツ賞の奨励賞を受賞した作品

───それで、研究活動に専念されるようになったわけですか。

ええ、それで、前にお話しした桂先生の研究室に入れていただいたのですが、桂先生の厳しいことといったらなかった。がみがみ怒られ通しでしたね(笑)。桂先生が定年になられてどうしようかと考えていたら、京都大学の湊長博教授から「私の研究室に来てみないか」とお誘いを受けました。その後横浜鶴見の理化学研究所の免疫センターに移り研究生活を続けたわけなんですが、理研では研究の傍らバンド活動にも力を入れ始めました(笑)。
2010年に開かれた国際免疫学会では、「Negative Selection」というバンド名で、Deep PurpleのMistreatedという悲恋の曲を「胸腺の中で大量に死んでいく胸腺細胞に捧げるレクイエム」と解釈して細胞死を模した舞踏を交えて演奏したり、美空ひばりの「リンゴ追分」をロック調にアレンジした曲や、「2億4千万の瞳」などを熱演したものです。

Mistreated (Deep Purple)

後飯塚先生によるあやしい舞踏の入ったMistreatedという曲では、「免疫学」と「ロック」と「暗黒舞踏」が融合を試みた。一度死にかけた胸腺細胞が力を振り絞って復活しスモークが漂う中を苦悶の踊りをみせるものの、大野先生の絶叫のような唄が終わると同時についに絶命する。

りんご追分(美空ひばり)

自分たちでロック調に編曲した「りんご追分」。

───最後に、中高校生にメッセージを。

「歳をとっても遊び心を忘れずに」ですね(笑)。

イラスト・図版提供/河本宏先生

(2013年10月4日取材)

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