この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第2回 私たちが種をまいた網膜再生の研究をいまの中高生の世代に花開かせてほしい。独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 網膜再生医療研究チーム チームリーダー 高橋政代 氏

やりたいことが見つかったらとことん追求してほしい

───先生は研究者でもあり、医者さんでもありますね。

大学病院の病棟責任者を3年間務めて、そのとき、手術もたくさんやったけれど、臨床治療だけでは毎日同じことの繰り返しで、自分が進歩しているという実感がもてなくなった。研究の世界に触れると新しい発見や進歩があり、目を開かせてくれます。こうした研究の成果を臨床治療に生かしたい、患者さんを治したいという思いもあって、研究も臨床医もできたらいいなと考えたわけなんです。
いま務めている神戸理化学研究所は、先端医療センター病院がすぐそばにあり、高度な研究も高度な臨床もできるという、私にとって理想的な環境にありますね。

───私たち中高校生がいまどんなことをしたらいいか、アドバイスをください。

医者になりたいのなら、勉強だけではだめ。いろいろな人の境遇や生活を理解したり、想像が及ぶように本を読んだり、生活の幅を広げることが大切だと思います。研究に関しては私の場合、中学生のころ星新一のSF小説が好きで、その斬新な推理、論理、アイデアなどに魅了されたけれど、その思いもよらない展開などはいまの研究にも役立っています。
それと、英語力はしっかり身につけておくといいですよ。私は小学生のころから英会話のテープを聞いたりしていたから、ヒアリングにいまでも役に立っています。

───自分の適性をどう見つけたらいいんでしょう。

好きなことがわいてこないと、なかなか適性って見つからないと思う。でも焦ることはありません。自分の適性がわからなかったり、何かが決まらないようなら、少し時間をおいて、自分の中にしたいことがわきあがってくるのを待つといいと思います。私が医者になりたいという気持が固まったのも、患者さんと接するようになってからのことなんです。そこで初めて、「患者さんを治したい」と思ったの。
そしていったん目標を定めたら、とことんその道を追求すること。研究者なら世界一を目指して頑張ってほしい。自分の利益以外のことを目標に掲げて一生懸命に取り組んでいると、みな助けてくれるものですよ。そのためにも笑顔を磨いてほしいな。
自分のやりたいほうに進めないからと途中であきらめてしまうのは、その程度の情熱しかないということ。角度を変えてみれば道がある場合が多いです。自分を信じて、熱意をもってやりぬいてほしいですね。

(2009年8月27日取材)

PAGE TOPへ
ALUSES mail