この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第7回 「エピジェネティクス制御」は、これからの皆さんの研究テーマですよ。 大阪大学大学院 医学系研究科 生命機能研究科 仲野 徹 教授

速いスピードで英語が読める力は必須

───長い研究生活を通じて、研究ってどんなものだと思っていますか。

中高校生の皆さんは、少し実験するとすぐにいろいろなデータが取れたり、成果が出たりすると考えるかもしれません。けれど、実際の研究というのは、毎日毎日実験を繰り返す体力勝負の世界という要素も強いんです。成果が出るまで早い人で5年、遅ければ10年、いやもっとかかることもある。知的な仕事というよりも泥臭い力仕事といったほうがええかと思います。生命科学の研究は、生き物を扱う研究なのでwet scienceと呼ばれていて、なかなか思うようには扱えないので、とくにその傾向が強い研究分野です。

───どんな資質を持った人が研究者に向いていると思いますか。

何事にも健全な好奇心を持てて「不思議だな」とか、「変だな」とか疑問を持てる人ですね。そして、いま、生命科学分野の研究は一人でこつこつ研究を続けるというよりも、あるテーマに向かってチームを組んで研究することのほうが多くなっています。それだけに、研究仲間とうまくやっていける、調整能力なども大事ですね。

───どんな勉強をすれば役に立つのでしょう。

何はともあれ英語の力をつけることですね。これから生物学、生命科学、医学などの分野では、大学や大学院の研究書や論文は英語が大半。すごい速いスピードで英語を読めないと、世界の第一線の情報を手に入れることができなくなっています。それと論理的にものごとを考えること、確率論的な考え方で物事をとらえることも必要でしょう。
ただ、それでは勉強だけすればいいかというとそうではなく、クラブ活動をやったり、映画を見たり、友人と遊んだり、それぞれの年代で、たとえば中高生ならば中高校生のときでなければできないことをやることも大切ですね。そうしていろいろなことを体験するうちに、どんな分野に自分の好奇心が向いているのかを知ることができるのとちゃうかなぁと思います。

最近、講談社ブルーバックスから翻訳が出た、「アメリカ版 大学生物学の教科書」はとても良い教科書です。アメリカの教科書は、読んで面白いようにできている。大学生向けの教科書ですけど、生物学や生命科学に興味がある高校生なら、理解できるようにつくられています。中学校や高校で習う生物学とはひと味違う、超お勧めの一冊です。

(2010年7月9日取材)

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