フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」

京大と共同で先天性小耳症の患者さんの耳をつくる

───iPS細胞を使って耳の軟骨の再生に挑戦しているとか。

3Dプリンターでつくった耳の型

これまでは、生まれつき耳が小さい小耳症の患者さんを治療する場合、肋骨の軟骨部分を採取して耳の軟骨を作製しようとしていましたが、耳は人体の中でも複雑な形をしていることなどもあり、なかなかうまくいきませんでした。そこで、京都大学iPS細胞研究所の妻木範行教授と共同で、iPS細胞と3Dプリンターを組み合わせた小耳症の患者さんに向けた再生医療の研究を進めています。
まず、患者さんの細胞からiPS細胞をつくり、それを軟骨細胞に分化させます。そして、患者さんの正常な片耳をCT(コンピュータ断層撮影装置)で撮影して、耳軟骨のデータを3Dプリンターに取り込みます。このデータをもとにして、ポリ乳酸ポリマーを材料に使って患者さんの耳の軟骨の型を3Dプリンターで作製します。そして、この型にiPS細胞から分化させた軟骨細胞を流し込んで、耳を再生させるという研究です。

───どんな作業分担になっているのですか。

妻木先生にはiPS細胞から安定した良質な軟骨細胞をつくって提供していただくことになっています。iPS細胞から軟骨細胞に分化させるとき、分化しきれていない細胞が混じっていたりすると移植してからがん化する恐れもあるので、その研究も非常に難しいと思いますね。そして、私たちは提供していただいた軟骨細胞を耳の形に成形していかなくてはなりません。提供していただく軟骨細胞は小さな粒状になっていて、私たちがこの粒状の塊を耳の形状に作り上げていくのです。
耳の軟骨というのはちょっと不思議で、とても微妙な構造で人体にくっついているのです。私たちはそれをインターフェースと呼んでいますが、インターフェースがきちんとしていないと生着しないのです。このあたりをクリアしていかなければならないので、iPS細胞と3Dプリンターによる耳の軟骨再生はまだまだ時間がかかりそうですね。少なくとも10年計画になると思います。

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