フクロウ博士の森の教室「からだを復元させる医療の話」

一生勉強できるのが医療の世界

───先生のこれからの研究テーマについて教えてください。

ティッシュ・エンジニアリング技術を使って大型臓器をつくることがテーマの一つです。そのときに臓器の骨格をつくるのも大切ですが、血管系を導入して細胞活性を高める必要があるのです。そうしないと、大型になればなるほど、栄養が行き渡らなくなり中の細胞が死んでしまうため、臓器づくりは困難です。私たちは血管系を導入するために、4次元足場と呼んでいるのですが、血管をつくる増殖因子を時間に合わせて入れていくなど、時間軸を導入した足場づくりを研究しているところです。

───3Dプリンターを使って大型臓器をつくることは難しいのですか。

私は、大型臓器をつくるには3Dプリンターは可能性があると思っています。というのは、3Dプリンターはたくさんノズルがあるので、細胞の粒だけでなくコラーゲンなどを吹き付けて生体組織をつくるのに必要なものを組み合わせて入れていくことができるからです。
臓器づくりのほかにもう一つ、これからは、膝関節の炎症などに対して幹細胞を注入して治療するなど、細胞療法が重要になってくると思われるので、そこに力を入れたいと考えています。再生医療製品の開発とともに細胞治療の研究を進めていきたいですね。

───若い読者にメッセージがありましたらお聞かせください。

私は医者というのは非常に魅力的な仕事だと思っています。臨床医として患者さんを診察・治療すれば感謝されますし、また、新しい医学を研究し、その真髄にふれることもできる。医療ロボットの開発に携わることもできるし、より幅広い視点から国の医療政策にも携わることができる。自分の適性に応じていろいろな分野で活躍できます。
今、生物学、生命科学は非常に発展していて、この分野で多くの人がノーベル賞をとっています。若い人にもぜひこの分野に進んでもらいたいですね。
医者に必要なのは豊富なアイデア、体力、幅広いネットワークをつくって豊かな人間関係を築いていくことです。人間関係は患者さんとの関係づくりにも役立ちますよ。医者になったら医療はサイエンスなのだから、臨床医も研究者の目を持ってほしいですね。
いくつになっても勉強することができることも医学分野の良いところです。私は還暦を過ぎているけれど、妻に「これまでは助走の時期。これからジャンプするんだ」と言っています(笑)。

(2014年5月13日取材)

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