この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第1回 いつか生命を創り出して、いのちの不思議を理解してみたい 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 大和 雅之 教授

患者さんの役に立ち、いつか生命を創り出してみたい

───生命科学を研究する楽しさはどんなところにありますか?

ひとつには、生命科学をツールにして、生命を創り上げることができるかもしれないってことかな。
一時期、生命現象は分子生物学ですべて説明がつくと考えた時代があったんだ。でもさ、大腸菌や酵母のような単細胞の生き物でさえ、超複雑な生き物でね、まだまだ分からないことがたくさんある。ましてや60兆個の細胞からできている人間の生命そのものを、時計を分解するようにばらばらに分解してみても理解することにはならないと思うんですよ。たとえばDVDプレイヤーを分解していってLSIや抵抗、コンデンサーなどいろいろな部品を取り出して、仮にそのひとつひとつの仕組みがわかったとしても、DVDプレイヤーを理解したといえると思えますか?むしろ、音と映像が出てはじめてDVDプレイヤーだと考えるのが普通でしょう。ところが、私たちは、まだ単細胞の生き物さえ、自分たちでつくることができていないじゃないか!

けれど、分解するのではなく、再生医療など組み上げるタイプの研究がさらに進んでいくと、生命についての新しい理解を達成できるかもしれない。機械ではない、生命だけがもっている独特のしなやかさの秘密に迫ることができるのではないかと思っているんだ。

細胞シートや再生医療の研究をしているのは、これまでの医療では治療できなかった患者さんの役に立つこと、そしてもう半分は、私たちが研究している生命科学、再生医療などの研究を通じて生命を創ることができるなら、人間とは何か、生命とはなにかが分かるかもしれないからというのが理由です。ずいぶん遠い将来の話だけれどさ、さっき話した「ブレードランナー」に出てくる生命科学の博士は、そうして、レプリカントを創ったんだよね。

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