この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第5回 ナノテクを活用して、生命現象を物理的に探究したい 青山学院大学 理工学部 物理数理学科 三井敏之 准教授

この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」 第5回 ナノテクを活用して、生命現象を物理的に探究したい 青山学院大学 理工学部 物理数理学科 三井敏之 准教授

Profile

三井敏之(みつい・としゆき)
1970年石川県金沢市生まれ。上智大学理工学部物理学科卒。1993年アメリカでの研究生活を志し渡米。ミネソタ大学物理学科研究助手、同大学大学院博士課程(物理学専攻)修了。その後ローレンスバークレー国立研究所、カリフォルニア大学バークレー校博士研究員を経て、ハーバード大学分子生物学科博士研究員に。2005年より現職。専門は生物物理、表面物理、ナノテクノロジー。原子、分子レベルの解析を通じて、生物の成り立ちを追究している。

profile
ヒトもふくめて物質は原子、分子からできている。生命活動は原子・分子によるものづくりともいえる。原子や分子のふるまいを研究するには、1メートルの10億分の1のナノスケールで観察できる顕微鏡が必要になる。三井敏之准教授は自らそれを可能にする走査型トンネル顕微鏡(STM)をつくり、極微小の世界を探究、生命現象の解明に役立てたいと研究活動を続けている。

自然を守るためにもサイエンスが必要だ

───どんな少年時代を過ごされたのですか。

父が国立公園の管理をするレンジャーの仕事をしていたので、いろいろな場所に引越しました。3歳の時に移った大分県は、自然が豊かなところでした。幼稚園のころは、夏になると毎日セミ捕りにあけくれました。雨の日も、です。私は一度こうすると決めたらとことんやり続ける性格で、多い日には40匹も集め、よく母から「そんなに捕ってどうするの!」と怒られたものです(笑)。
小学生になってからは北海道の摩周湖の近くに移り住みました。摩周湖は透明度が世界一ともいわれるほどきれいな湖で、父はそこの阿寒国立公園の管理の仕事を担当していたのです。あるとき、本当は一般の人は入ってはいけなかったのかもしれませんが、摩周湖のほとりに連れて行ってくれたんです。そこで父が水質調査をする様子を間近で見ることができました。そのとき、「自然を守る」ためには、その背後にこうした定量的で科学的な調査、つまり「サイエンス」が必要なんだと、子ども心に実感した覚えがあります。

北海道の弟子屈町硫黄山にて(8歳)

北海道の弟子屈町硫黄山にて(8歳)

───科学にやはり興味をもっていたのですね。

ええ、理科と算数は得意でしたね。それと本もよく読んでいました。伝記が好きで、中でも野口英世とエジソンは別格でしたが、とくに野口英世は私にとっては神聖な人でしたね。いまでも尊敬しています(笑)。スポーツは剣道と野球をやっていました。北海道の冬はグラウンドが雪に覆われて野球ができなかったので剣道を、夏には剣道と野球の両方を楽しんでいました。
一人で本を読むのも、みんなと野球などをやるのも好きで、内向的な面と、外向的な面がうまくバランスが取れていたような気がします。父の転勤が多かったために、新しい環境で新たな友達とコミュニケーションをとる方法を自然に身につけていったのかもしれません。
中学時代は山梨県の甲府で過ごしました。高校受験のことはいちおう考えていましたが、特に塾に通ったりすることもなく、結構のんびりしていましたね。得意の科目は数学と理科。英語はあまり得意ではなかった。まだ将来の進路などについては、深く考えてはいなかったように思います。

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