この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第17回 ショウジョウバエの聴覚研究を通じて、音楽に感動する脳の不思議を探究したい。名古屋大学大学院理学研究科教授 上川内 あづさ

大学4年で研究のおもしろさを発見

───将来どんな仕事に就きたいと考えていたのでしょう。

中学生のころは本が好きなこともあって、図書館にでも勤められたらなんて漠然と思ったこともありましたが、高校時代になって進路を選択するときは、将来の職業などについてあまり真剣に考えてはいませんでしたね。
薬学部を選んだのは、薬剤師になりたいといった資格志向ではなくて、生物、物理、化学などの勉強が専門的にできる学部だったからです。薬剤師の免許も取れるなら取っておこうくらいにしか考えなかったですね。ただ、薬学という学問を学んでみたかったという気持ちが強かったのです。

───研究がおもしろくなったのはいつごろからですか。

大学の4年生になって研究室に配属になってからですね。物事をロジックで考えて予測を立てるおもしろさ、さらにその予測がひっくり返されることで、また新しいアイデアが生まれてくる、そのダイナミズムに魅力を感じるようになりました。
大学の研究室では、いま東京大学大学院理学系研究科教授として活躍されている久保健雄先生のもとで「ミツバチの社会性を支える脳の仕組み」を研究テーマとしました。私たちのすべてを制御している脳というものを理解してみたい、社会の中で私たちがコミュニケーションを取りながら生きている意味などを知りたいと考え、ミツバチの脳の研究をその手掛かりにしようと思ったのです。久保先生には、「自分の内側から出てくる問いが大切だ」ということを教えられ、いまでも研究方針に迷ったときなど、この言葉を思い出すようにしています。
学生時代に、いくつかの発見をして論文にまとめたのですが、その過程で、世界で初めて自分が発見することのおもしろさと、それを世界に発信する喜びを知りました。

───大学を卒業するとき、就職して社会人になるのではなく、研究者になろうと考えたわけですか。

そのときは研究者としてやっていこうとまでは考えていませんでした。研究者で生きていくのはとても厳しいことはわかっていましたから、とりあえず、好きな研究を続けていこう。まずは3年間、とにかく研究を続けよう、そういう気持ちで研究生活を更新していったんです。その後、幸い32歳の時に東京薬科大学で助教のポストをいただき、本格的な研究生活に入ることができました。

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