この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第17回 ショウジョウバエの聴覚研究を通じて、音楽に感動する脳の不思議を探究したい。名古屋大学大学院理学研究科教授 上川内 あづさ

この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」 第17回 ショウジョウバエの聴覚研究を通じて、音楽に感動する脳の不思議を探究したい。 名古屋大学大学院理学研究科教授 上川内 あづさ

Profile

上川内あづさ(かみこうち・あづさ)
1997年年東京大学薬学部卒業。2002年同大学大学院薬学系研究科機能薬学専攻博士課程修了。2002年基礎生物学研究所・発生生物学研究部門 科学技術振興機構BIRD研究員。2005年ドイツケルン大学に留学。2008年~2011年東京薬科大学生命科学部助教授。2011年名古屋大学大学院理学研究科教授。2010年10月より、JSTさきがけ「脳情報の解読と制御」研究者を兼任。音の情報が脳の中でどのように処理されて特定の意味を持つにいたるのか、その変換機構を理解したいと思い、ショウジョウバエを使って研究中。2010年度、文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞。

profile
最初は国語や歴史が好きだった上川内先生は、受験勉強を通じて答えが明快に出る数学や物理、化学、生物など理系の勉強が好きになった。大学は薬学部を選択したけれど、薬剤師をめざしてというよりは、純粋に学問として薬学を研究したかったという。そしていま、ショウジョウバエの聴覚の研究を通じて、音とコミュニケーションの問題を解き明かそうとしている。

生き物と読書が好きだった子ども時代

───どのような子ども時代を過ごされましたか。

東京の大田区で育ちました。町工場が集まっている地域で、家の周りに豊かな緑が広がっていたわけではありませんが、野鳥や虫などはそこここにいたので、セミを集めたり、鳥の観察などをして遊んでいました。自転車で30分くらいのところに大田区の野鳥公園があったので、鳥を観察するには良い環境でしたね。バードウオッチングでとくに好きだったのはオナガでした。両親も鳥が好きで、家で魚を飼っていたこともあって、自然に生き物が好きになったのかもしれません。そんなわけで生き物図鑑には夢中になりました。なかでもケニアやタンザニアの草原にいるトムソンガゼルが好きでしたね。 読書も好きでした。特に日本の歴史に興味がわいて、「マンガ日本の歴史」を愛読していました。そのほか、ミステリーの「怪盗ルパン」「シャーロックホームズ」などもわくわくしながら読んだものです。

近所の空き地で(3歳ごろ)

近所の空き地で(3歳ごろ)

お祭りでの豆絞りのハチマキ姿(右)

お祭りでの豆絞りのハチマキ姿(右)

───小学生の時は塾などに通ったのですか。

4年生の終わりごろから中学受験のために週1回、大手の進学塾に通い、文京区の中高一貫の女子校に合格しました。学校は家から電車を使って40分ほどの距離だったので、定期券を持って電車で通学しましたが、小学生の時にはできなかった経験で大人になったような気分で嬉しかった(笑)。

10歳のころ、小笠原諸島に旅行した。写真は行きの船の中

10歳のころ、小笠原諸島に旅行した。写真は行きの船の中

───中学・高校での学校生活で楽しかったのは?

中学では、普段はできないことをやってみようと茶道部に入ったんです。それまでなじみのなかった抹茶や和菓子の世界は新鮮でしたね。お茶を点てて、のんびりおしゃべりして、そこで友人もたくさんできました。女子校で、世の中にはいろいろなタイプの女の子がいるんだなって実感しましたね。
中学生になっても、相変わらず生き物も読書も好きで、夏休みなどは図書館にこもって本を読んでいました。好きな学科は中学生のときは国語、歴史、英語などの文科系の科目でしたが、高校に進んでから本格的に受験勉強を始めると、それまでさほど好きでなかった数学がおもしろくなってきたのです。
論理で突き詰めていくと答えが明快に出るところに、文科系の科目にはない魅力を感じたのだと思います。答えが出るとスッキリして気持ちがよかった(笑)。そんなことから数学以外の化学、物理、生物などにも関心が深くなりました。

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