この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第19回 発生学はアートだ。美しくなければ発生学ではない! 東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 教授 武田 洋幸

おもしろいものを発見し、その裏に何があるかを考えよう

───そうした左右軸変異体などの研究テーマはどのようにして決めるのですか。

インスピレーションかな(笑)。おもしろいと思ったものを追い求めて、あッ、これはおもしろい、この背後にはもっとおもしろいものが隠されていそうだ、そう考えてテーマを選んでいるんです。
心臓が左右逆の位置にあるメダカを見ると、この変異体に興味をひかれて、その背後にはどんな理由があるのか、それを知りたくなるのです。いろんな変異を持ったメダカがいることはすでに分かっていたことですが、誰もその背後に何があるか、研究テーマとして宝の山が横たわっていることに気づかない。「これを研究すると何か重要なことにつきあたる」という嗅覚を持つことが研究者には必要ではないでしょうか。
これからも、インスピレーションがわいたテーマをどこまでも追いかけていくつもりです。

先生の研究室にはメダカやゼブラフィッシュの変異体や各地で採集したメダカがズラリ飼育されている。

先生の研究室にはメダカやゼブラフィッシュの変異体や各地で採集したメダカがズラリ飼育されている。

───中高校生に何かメッセージを。

私自身、それほど優等生ではなかったから、アドバイスや、メッセージと言われても、困ってしまいますね(笑)。
でも、「後先考えずに好きなことやってみたら」と言いたいですね。きっと、どこかに行きつくはず。その場その場で好きなことを続け探究していくことで、真理を深めることができるのではないでしょうか。もちろん、この現象の裏には何があるのか、また、このテーマは時代の流れの中でどこに位置づけられるかなど、考えておかなければいけないこともありますが、いちばんな大事なのはやはりおもしろいことを感じ取る鋭い嗅覚を磨くことかな。
それと、若いときには海外に出て、日本や日本で生きている自分を相対化することも大事だと思います。私も海外留学して、日本を離れて初めて日本の良さが分かり、日本を好きになったから。違う環境に自ら飛び込んで、新しいものに挑戦してほしいな。

先生写真

(2012年8月9日取材)

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