この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」

進路を悩んだ高校時代

───中高校生のころ、将来やりたいことはあったのですか。

いえ、中学生のころは何をしたいのか、まったく目標を持てなかった。勉強はそこそこできていたので、手堅く弁護士か医者になろうかなと漠然と思っていましたが、真剣に考えたことはなかったですね。自分の進路や将来について悩むようになったのは高校生になってからです。興味は幅広くあったのだけれど、本当にそのことがやりたいかと自問してみると、そうでもないんですね。
高校は進学校で、1年生のころは成績も良かったのですが、2年生になってからそんな悩みもあったりしたので、授業にあまり出ず、出ても寝てばかりで、模擬試験も受けなかった。海岸で一人海を眺めて考えごとをするような日が増えたんです。まあ、青春の一ページといったところですね(笑)。
出席も進級できるギリギリだったんじゃなかったかな。同じ高校に通った姉がいますが、数年前の同窓会で、先生から「お前の妹にはほとほと手を焼いた」と言われたそうです。最初のころはトップクラスの成績だったのが、あれよあれよという間に下から数えて何十番目という感じになり、出席日数もギリギリで特別三者面談を開かれる始末で、母親に涙ながらに嘆かれました(笑)。高校2年生の時、「大学は受験しない。社会に出て働きたい」って、親に宣言したら、もう大変でした。

───何か転機があって、まっとうな道(?)に戻ったのですか。

高校3年生から、今は京都教育大学の教授をされている村上忠幸先生が化学を担当されて、その授業がとても面白かったんです。いわゆる受験勉強としての化学ではなく、サイエンスとしての化学を教えていただきました。すると化学の勉強がガゼン面白くなってきて、成績もぐっと上がってきた。大学に入って化学を学ぶのもいいかなって思い始めたんです。その時すでに、センター試験まであと3-4ヵ月、という時でした。
受験した奈良女子大は2次試験が数学と化学だけだったので、センター試験を集中してやれば秋からでも何とか間に合うだろうと猛勉強しました。受験の年の問題は比較的数学がやさしくて、化学が難しかった。数学より化学が得意な私にとってはラッキーでしたね。

高校卒業時。化学室にて、恩師の村上忠幸先生と(白衣は借り物)

高校卒業時。化学室にて、恩師の村上忠幸先生と(白衣は借り物)

───化学を面白いと感じたのはどんな理由だったのでしょう。

物理や数学はきっちり答えは出るけれど、事象としては目に見えないでしょ。化学は化学式で理論的に考えることもできるし、なおかつ、実験すると化学反応で色が変わったり目に見えて結果がわかる。理論と観察の両方から迫ることができるのが楽しかったのだと思います。

───高校生活で何か思い出に残っていることはありますか。

進学した高校は、進学校にもかかわらず大変自由な雰囲気で、制服もないし、校則もないに等しい学校でした。だからファッションにも興味を持ったし、3年生の秋までは勉強よりも遊びに夢中になっていました。運動会や授業を途中で抜け出してカラオケに行ったり・・・・。バンドに興味を持ち出したのもこのころからですね。もう少しだけでも真面目に勉強しておけばよかったかな。

───大学生活はいかがでしたか。
バンド活動に熱中した。バンド名はつむじ

バンド活動に熱中した。バンド名はつむじ

大学の授業は面白かったのできちんと出ていました。高校生の時より大学に入ってからの方が真面目に勉強したので、普通の人と逆パターンだったかも。卒業時には総代の次点だったそうです。
しかし同時に、大学に入ってからバンド活動を始めて、そちらの方にかなり熱中していました。ロック系のバンドで担当はギターとボーカル。家で曲をつくってスタジオで練習して、月に2回くらいライブハウスで演奏したりCDを出したり、アマチュアだけれど趣味が高じた感じで、結構、活動していたんですよ。
でも、音楽と研究ってけっこう似ているんです。作曲するプロセスは一つの研究を仕上げていくプロセスに通い合うものがあります。一つの曲をつくろうと思ったら何かのコピーではだめで、自分のオリジナリティをどう表現するかが大事ですよね。同時に、一般の人に好まれるかどうかも大事なポイントです。そのプロセスでメンバーやCDをつくる人と協力して音づくりをし、できた曲をどう発表するかをみんなで考えなければならない。研究で成果を出す場合も、これまでの先輩研究者の成果は参考にしても、自分の研究のオリジナリティをどう出していくか、それを研究グループの仲間と共有して研究を発展させ、結果として分かったことをどのように表現して発表するかが大切です。作曲・バンド活動をやったことが、最も研究活動に役立ったのではないでしょうか(笑)。
自分でいうのもなんですが結構音感が良かったこともあり、このまま細々と何かしらの音楽関係の仕事に携われたら楽しいんじゃないかなんて考えていました。それと同時に、修士まで進学して、化学系の企業に手堅く就職しようかなとも考え、相変わらずフラフラしていました。

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