中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

ミドリムシの栄養バランスに注目

鈴木健吾 取締役研究開発本部長

鈴木健吾 取締役研究開発本部長

東京大学の本郷キャンパスの構内に東京大学アントレプレナープラザと呼ばれる建物がある。アントレプレナーとは、「企業を起こす者」という意味で、この建物には、従来にない発想や技術によって新しい事業を興そうとする企業が参加し、研究成果を社会に還元することを目的に東京大学がサポートしている。

(株)ユーグレナのユーグレナとは、ミドリムシの学名だ。会社名そのままに、この企業では、数年前からミドリムシの商業的な利用を目的に技術開発、商品開発を行っているのだ。同社取締役研究開発本部本部長の鈴木健吾さんに、まず、いったいミドリムシとはどんな生きものなのかから伺ってみる。
「ミドリムシは、5億年前に地球に誕生した植物とも動物ともいわれる、体長30~50ミクロン(1ミクロンは1000分の1mm)の微生物です。葉緑体を持っているという面から考えれば植物ですし、細胞を収縮させて鞭毛で動くという面からみると原生動物に分類できます。一般的な植物に見られる固い細胞壁は持っておらず、柔らかい細胞膜を持っています。湖沼、水の流れがゆるやかな川などにいますが、いちばん捕まえやすい場所は田んぼでしょう。肉眼では見えないので顕微鏡で観察します。ちょっと見てみますか」
日本科学未来館で見たミドリムシの姿が、ここでも観察することができた。やはり、からだをゆらゆら動かしている。植物というより動物に近い感じがする。

(株)ユーグレナでの研究風景

(株)ユーグレナでの研究風景

「ミドリムシは、ビタミンEやβカロチンなどのビタミン類、頭を良くするというので話題になったドコサヘキサエン酸(DHA)、さらには食物繊維に似たパラミロンという成分、カルシウム、亜鉛といったミネラル類なども含んでいます。ヒトにとって不足しがちな栄養素を自然な形で含有することから、食物としての利用が注目されたのです。なかでも、必須アミノ酸がすべてバランスよく入っていることが分かってきていました。どれほど質の良いアミノ酸が含まれているかというと、人体での必須アミノ酸の利用効率を示すアミノ酸スコアが、理想を100とすると85にも達していて、他の植物よりも高い数値となっています」

種苗培養

種苗培養

ミドリムシの培養装置

ミドリムシの培養装置

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