中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

SCIENCE TOPICS いま注目の最先端研究・技術探検!

第4回 ミドリムシクッキーを食べたことありますか?~小さな生物の大きな可能性を探る

ミドリムシ(学名:ユーグレナ)は池や水田にすむ体長0.1mmにも満たない微生物。鞭毛によって動く動物でありながら、葉緑体によって光合成を行うという植物の性質をあわせもったユニークな生き物だ。このミドリムシがいま食糧問題や地球温暖化の解決に一役買う可能性を秘めていると注目を浴びている。

ミドリムシ(学名:ユーグレナ)

ミドリムシ

未来の食―ミドリムシのクッキーを食べる

東京のお台場にある日本科学未来館は、生命科学をはじめ、ロボットや地球科学、環境技術など、新しい時代をひらく先端の科学技術をわかりやすく展示・紹介し、多くの子どもたちが学びにやってくるスポットだ。ここで、2009年11月21日から2010年3月22日まで、「‘おいしく、食べる’の科学展」が開催されている。「食べること」は「生きること」。どんな人でも食べなければ生きていけない。そんないのちの源である「食」について、「おいしい」をキーワードに、先端科学技術の視点でとらえていこうという企画だ。なぜ私たちはおいしいと感じることができるのか、そのメカニズムの探求や、保存食としての宇宙食、あるいは食品廃棄物の問題などが、見たり、触ったり、参加したりしながら、楽しく学べるように展示されている。

‘おいしく食べる’の科学展
‘おいしく食べる’の科学展

その中の一つのテーマが、「未来の食」。SFの世界では、1粒飲めば栄養が満たされるカプセル食などが描かれているけれど、いったい、これからの時代、私たちはどんな食物を口にするのだろうか。その未来食として取り上げられているのが、微生物のミドリムシだ。実演コーナーでは、同館の科学コミュニケーターの寺田雅美さんが、世界の食糧事情やミドリムシの食糧化について説明しているところだった。

‘おいしく食べる’の科学展
「未来の食」コーナー

「未来の食」コーナー

科学コミュニケーターの寺田さん。手に持っているフラスコにミドリムシが入っている

科学コミュニケーターの寺田さん。手に持っているフラスコにミドリムシが入っている

「いま世界の人口が増えていて、2050年には92億人に達すると予想されています。けれども、地球上の資源は限られていて、将来の食糧危機が心配されています。そこで、科学技術の進歩を背景に、新しい食材について研究が始まっているのです。新食材のポイントになるのが、(1)栄養バランスがいい、(2)丸ごと食べられて無駄がない、(3)大量生産ができる、という3つの条件です。ミドリムシは、この条件にぴったりな微生物なのです」

寺田さんの隣には顕微鏡が置いてあって、覗き込むと、いる、いる、小さな微生物がゆらゆら動いている。こんな小さなミドリムシだけれど、私たちが生きていくのに必要なビタミンやアミノ酸などの栄養素をバランスよく含んでいるのだそうだ。しかも、私たちが消化できないセルロースなどからつくられる細胞壁がないため、消化吸収しやすい。一定の条件さえ与えれば大量生産ができることも食糧として魅力があるという。将来、キッチンの水槽でミドリムシを培養して、パスタにまぜてランチに…なんて可能性もあるかも。「やだー、ありえない~」と思ってはいけない。すでに、乾燥させたミドリムシを、食材に混ぜたクッキーやベーグルが作られ、日本科学未来館の中で販売されているのだ。

さっそく、クッキーとベーグルを味わってみる。少々青臭い気もするが、意外や、素朴でヘルシーな味だ。このミドリムシクッキーには、1枚で約2億匹のミドリムシが使われているのだそうだ。ベーグルになると約15億匹! このほか、東京ではミドリムシ入りのパスタが食べられるお店もあるとか。日本科学未来館を訪ねる前は、「いったいミドリムシなどが食糧になるのか」と疑っていたが、こうして実際に食べてみると、もっとミドリムシについて知りたくなってきた。

‘おいしく食べる’の科学展

レストランではミドリムシベーグルが人気メニューのひとつ

ミドリムシクッキー

ミドリムシクッキー


ベーグル

ベーグル

日本科学未来館のミドリムシの展示やクッキー、ベーグルの開発にあたっては、(株)ユーグレナというベンチャー企業が協力してくれたというので、さらに詳しいことを聞くために、ユーグレナを訪ねた。

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