中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

エウロパに地球外生命の可能性を見る

「宇宙に果たして生命はいるのか」とは、私たちが長い間、繰り返してきた問いかけだった。長沼先生は、宇宙生物の生存の可能性について、木星に2番目に近い惑星のエウロパに注目している。

木星探査機ガリレオは、1989年に打ち上げられ、木星とその惑星の探査に挑んだ。エウロパにも何度も接近し、調査を行い、さまざまなデータを収集することができた。
「エウロパは氷の殻に覆われているけれど、その下には海が広がっていると考えられています。さまざまなデータを解析したところ、氷の殻の厚さは約5~10キロメートル、海の水深は約50~100メートル。そして、エウロパの海の底には海底火山があり、エウロパという天体の内部から化学物質と化学エネルギーを供給しているのではないかと思います。エウロパの海底火山は、チューブワームが生息していた地球の海底火山にとてもよく似ているわけですね」

エウロパ

エウロパ(NASA)

実際に誰もエウロパの海に潜ったわけではないから生命が存在するかどうかは分からないが、長沼先生はエウロパになんらかの生命が生存している可能性は高いと考えている。
エウロパの氷の殻の下に海(湖)があるという環境は、ちょうど南極の氷の下にあるボストーク湖に似ている。ボストーク湖は、厚さ3000メートルの氷床の下にある100個以上の湖の一つで、面積は琵琶湖の約20倍、最深部は670メートルもある。しかし、ボストーク湖の氷床掘削は湖面まであと少しのところで足踏みしている。氷床を掘削する際に、人間の手によって不用意に汚染することは避けなければならない。もし汚染してしまうと、湖に生息する微生物などの生き物が、外部から持ち込まれたものと区別がつかなくなるし、何らかの影響を被る可能性があるからだ。関係者の間で、ボストーク湖の氷床掘削にあたって汚染しない方法を検討しているが、これは来るべき将来、エウロパの海の探査のための前哨戦だと長沼先生は位置づけている。

ボストーク湖

ボストーク湖(NASA)

「南極には不思議な魅力があり、また来たくなることを“白い病”というのだそうです。
エウロパの海を知り、そこに生命を見つけたら、それこそエウロパの“白い病”にとりつかれてしまうでしょう」

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