中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

私たちはどこから来て、どこに行くのか

1990年代の終わり、NASAは「アストロバイオロジー」という新しい学問分野を提唱した。その目標は、(1)私たちはどこから来たのか、(2)私たちは孤独な存在なのか、(3)私たちはどこへ行くのか、この3つの問題を解明することだという。
これまでの宇宙探査は、天体の写真を撮影して地形を調査したり、土を採取して物理化学的に性質に関するデータをとることを主体にしてきた。これからは、そうした研究のほかに、「生命に関する“考察”」を最も重要なテーマとして掲げようというのだ。

「いま、私は“考究”しているところです。もともと学者というのは、“研究”と“考究”が車の両輪なんです。実験もするけれど、考えることが重要な仕事です。アストロバイオロジーでは、この考究が非常に重要なウエイトを占めています。たとえば太陽系外の惑星で水が存在するらしいという情報があったとすれば、何をチェックしたら生命が存在するかどうかが分かるのかを理論的に組み立てていくわけです」

長沼先生の究極の研究目的は、“生命とは何か”を探求することだという。
「生命はどこでどのように発生して、どこに行こうとしているのか、それはまた、中高校生も含めて、私たちがどのように生きていくのかを考える、哲学にも通じるのです」
こう話してくれる長沼先生は、いわゆる普通の生命科学者、生物学者とは一味違う感じがする。子どものころから「自分とは何か」「生命とは何か」などについて考えるのが好きで、鏡に映る自分を見て、「おまえはいったい誰だ」と考え続けた。そのときの吸い込まれるような浮遊感や不安感がたまらなかったという。

「高校生のころ興味をひかれたのが、教科書にも載っていた“生命の起源”の問題でした。生命とは何かを考える上で、生命の起源を考えることは重要な意味を持っていると感じ、それを探ろうと辺境の生物を考え、そしていま生命そのものについて、さまざまな角度から考え続けています。いわば“メタ生物学”ですね。仮に、地球外にも生物が存在するとしたら、おそらく地球上の生命の概念では捉えられないでしょう。新しい生命の定義を考えなければなりません。中高校生の諸君も、“生命とは何か”“私たちはなぜ生きているのか”一度考えをめぐらしてみてほしいな」
そして、生きるための力をぜひ若いうちにつけてほしいとメッセージを送ってくれた。

(2011年9月公開)

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