さらに興味深いのはここからだ。田川先生は、このデバイスにさまざまなキットを連結して代謝システムをつくったのである!
「まずシリンジポンプから、1時間40マイクロリットルの割合で培地を腸管上皮細胞のチップに押し出します。食べたものや薬剤が腸でどのように吸収されて体内に入るかを確認するためのものです。その後vHELPへ。vHELPのチップの下には電極がついていて心電図が測れます。生命システムというからには、栄養を取り込むだけでなく、不要になったものを排出する機構、いわば上下水道が備わっている必要があるのですが、vHELPにその機能も持たせるのは難しいので、透析チップも用意しました。また、途中にpHやDO(溶存酸素量)をモニターする装置もついていて、動態をウオッチできるんです」
田川先生はこのシステムを「Minimal Mammal in vitro Model(最小哺乳類in vitroモデル)」と名づけている。
「最小とは言っても、システムごと培養器に入れなければならないので、サイズとしてはターゲットにした2cmどころではないのですが、代謝機能をもった一つの細胞由来の生命モデルとしては、世界初の人工生命システムといえるでしょう」
▲ Minimal Mammal in vitro Model(最小哺乳類in vitroモデル)の概念図