中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

コウモリの採餌ルートなども研究対象に

研究対象のアブラコウモリは、手のひらにちょこんとのる大きさだ

研究対象のアブラコウモリは、手のひらにちょこんとのる大きさだ

合原先生はカエルの歌のほかに、コウモリが餌をいかにして捕まえているのか、その捕食行動の数理モデル化にも取り組んでいる。
「私が所属している脳神経行動工学研究室の飛龍志津子准教授は、コウモリの超音波センシングのしくみなどを研究しています。コウモリについては飛龍研究室との共同研究で、日本に広く生息しているアブラコウモリが研究対象です。コウモリはほとんど目が見えないので、餌を捕まえるには餌に向かって超音波を出し、跳ね返ってくる超音波を両方の耳で検知し、その時間差などで複数の餌がどこにいるかを判断しています。『エコーロケーション』というシステムですが、秒速5mくらいのスピードで飛びながら、一晩で数百匹もの餌をとるため、餌をいかにロスなく捕まえるかが重要になります。コウモリには自分の聞きやすい音の高さがあり、跳ね返ってくるエコーを聞きとりやすいように、発信する超音波もその音の高さに合わせているんです。そこで、飛龍先生はコウモリの頭の上にテレマイクを載せて飛ばし、飛行中にコウモリが聞いている音がどんな音なのかを収録したり、野外にマイクロフォンアレイを設置し、コウモリの配置や超音波の放射タイミングなどを計測したりしています」

コウモリの野外調査では野外にマイクロフォンアレイを設置し、コウモリの空間配置や地超音波の放射タイミングを計測

コウモリの野外調査では野外にマイクロフォンアレイを設置し、コウモリの空間配置や地超音波の放射タイミングを計測

こうして集めたデータをもとにして、複数の餌の位置情報によってどのような飛行ルートをとるのかなどを、研究室の学生たちとディスカッションしながら数理モデルを使って解明しようとしている。

カエルやコウモリのほかに、例えば、スズムシの鳴き声の解析とか、合原先生の研究を応用できる動物はいないのだろうか。
「昆虫に関しては研究対象として興味はあるけれど、スズムシのように草むらにいるものは、今のカエルホタルのシステムでは難しいですね。草むらの中で光っても、その様子をビデオ撮影することが難しいなどの問題があるからです。そうそう、数理モデルをほかの動物に応用する場合、カエルだったら横にいるやつが鳴いているから自分も鳴かなきゃというふうに比較的シンプルな行動原理を持っているけれど、賢い動物はどうもうまくモデル化するのが難しいです。実はコウモリも結構賢いので、苦労することもあるんですよ(笑)」

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