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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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物理や化学、数学などさまざまな分野が共同で、生命の謎を探究する時代

細胞内での分子モーターによる輸送という生命現象を探究している林先生だが、大学では理論物理学を学び学位を取得した。

転機となったのは、バルセロナ大学に留学した際に、ラボのボスから「君の実験なんだから、データを解析するだけでなく実験もやりなさい」と言われたこと。ノーという語学力もなかったので、最初は仕方なしに始めたという。

「それまでは長い間、コンピュータで実験データを見てプログラミングしたり、モデルをもとに解析したりする生活を続けてきたわけですが、いざやって見ると生物実験がすごく新鮮でおもしろく感じられ、実験にのめり込んでいったんです」

こうして、理論を構築して式を書くだけの毎日から、実験のために動物の解剖までやるようになって、世界が180度変わった、と林先生は振り返る。
「人間、何が転機になるか分かりませんよね。もともと美術や技術家庭科などで手を動かすことも好きで、ラボの仲間から生物実験の手法を学ぶことで、生物と物理の融合分野を開拓したいと思うようになりました」

バルセロナ大学で生体高分子の物性を調べる研究に携わったのち、帰国後は大阪大学の研究室に所属して生物実験の勉強を続けた。分子モーターの新しい物理測定の方法を提案し、実験により実証。生物と物理が融合した研究が評価されて2010年に日本生物物理学会若手奨励賞に輝いた。

最後に読者へのアドバイスをうかがうと……。

「1つの研究でも生物、物理、化学、工学など、多くの分野の知識が必要な時代です。ですから、1つの教科だけでなく複数の教科に興味を持ってほしいですね。
今はたくさんの教科を一人で全部こなすのではなくて、いろいろな分野の研究者が一緒になって新しいものをつくり出す時代だと思っています。高校生のときって、宿題をやるのでも一人でやるのが正しいと教わるし、研究も一人でするものだというイメージが強いかもしれませんが、いろいろな人とやるからこそ研究が楽しいということを知ってほしいと思います」

研究者に必要なのは、なんといってもコミュニケーション力、また海外の研究者との共同研究も増えているので、語学も重要。女子生徒に向けては、「私たちの世代も女性が力を発揮できるいい時代を作るために頑張るので、ぜひ研究者をめざしてほしい」と熱いエールを送っていただいた。

(2019年6月18日更新)