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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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特別編 3次元脳オルガノイドが拓く脳研究の近未来

5 生物学の大転換を目撃できる

池内先生の研究室には現在約20人のメンバーがいて、新しい学生も増えているそうだ。ドゥンキー博士はスイス出身で、博士課程から池内ラボで研究を進めているが、このほかカナダ、フランス、ドイツ、ギリシャ、シンガポール、韓国、ペルー、中国…と国籍もさまざまで10か国近くになるため公用語は英語だ。フランスのボルドー大学とは国際交流協定を結んでおり、毎年、電子工学系の学生がやって来るという。

「私たちの研究メンバーは分野もさまざまで、細胞培養が好きな人もいれば組織工学が好きな人もいる。ソフトウェア系もハードウェア系もいます。ボルドー大学とはFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)という並列処理が得意なプロセッサを使って神経のメカニズムを再現する研究を8年ぐらい行っています。だから、コンピュータに興味のある人が、バイオを研究するのもおもしろいと思います」

米国のイーロン・マスク氏などが、脳にチップを移植しコンピュータとつなぐことで身体機能を拡張するBMI*5に力を入れているが、今後は脳とコンピュータ、脳オルガノイドの3つが融合していくと先生は見ている。

*5 BMI:Brain Machine Interfaceの略で、脳と機械を直接接続し、脳神経の機能を補助・補完する技術のこと。

「技術の進歩はものすごく早く、3次元の組織に寄り添うような、非常に小さな電極が登場する日もすぐそこに来ています。オルガノイドをつくるとか、タンパク質合成など、生命工学の分野はいままさに開拓期。何をやっても新しいことだらけで、生物学の転換点といえます。
ぼくらの世代にとって、ヒトゲノムの解読やiPS細胞の登場はものすごい衝撃でした。いまの若い人たちはiPS細胞のことを当たり前に知っている“iPSネイティブ”ですが、きっと次のすごい衝撃を目の当たりにできるでしょう。そういう熱狂に立ち会えて、教授も学生も関係なく、一緒に論文を読みデータを見てワクワクできるところが研究のいいところです。研究者になりたい人には、ぜひ頑張って仲間になってほしいなと思います」

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