中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第7回
植物は血縁を見分ける!?
自他識別能力の農業への応用

第2章 高校生からの研究紹介1
〜ミドリムシが植物に与える影響〜

佐藤
私と田村さんは、ミドリムシ*を水耕栽培の培養液に入れたらどのような効果が出るのかを調べています。これまでに行った研究で、ミドリムシが植物の成長を促進させることが分かってきました。今は、具体的に何が植物の成長促進に関わっているのかを追求しているところです。
*ミドリムシは、体長0.1mm程度の単細胞生物であるユーグレナ属の総称です。鞭毛を持ち運動する動物としての性質と、葉緑体を持ち光合成する植物としての性質を両方持つ生物として知られています。

ミドリムシの顕微鏡写真

なぜミドリムシが植物を成長させるのか、その原因を探っています!

佐藤 美結 (さとう みゆう)さん(高校1年生)

深野
培養液を循環させる大きな水耕栽培の装置を使っているのですか?
田村
いいえ、植物1個体ごとに容器に入れて、人工気象器の中で苗を育てています。
条件を変えて植物の成長度合いを比較します。

田村 ニナ (たむら にな)さん(高校1年生)

実験方法を説明している様子

深野
(生徒の資料を見ながら)発芽してから4日目のスプラウトを使っているのですね。
田村
はい。通常の水耕栽培用の培養液と、ミドリムシを培養液に入れた液で育てた植物を、それぞれ生重量を測定することで、成長度合いを比較しています。
ミドリムシの有無で、成長度合いをプロットした図がこちらです。

ミドリムシが持つ植物成長促進効果実験の結果
ブロッコリーの種子をミドリムシなしの培養液(左)、ミドリムシありの培養液(右)で4日間人工気象器内で栽培した。それぞれの植物体の重さを計量したところ、ミドリムシありの培養液で育てた植物体のほうが統計的に有意に重く、成長することが分かった。
***p-value<0.01 (t-test)のため統計的有意

実験中の植物の様子

深野
まず、結果の図の見せ方が素晴らしいです。僕も農場に来た学生に統計を教える機会がありますが、大学生でもはじめのうちはなかなか使えません。ですが、皆さんの図はしっかりと統計処理ができています。これは100点満点の図の作り方ですね。どうやって作っているのですか?
佐藤
私たちが計測したデータを担当の先生にお渡しして、図にしてもらい、統計処理は自分たちで行いました。
深野
統計は研究データを使ってその意味を見つけ出すために必要なことなので、今から触れているのはすごいですね。なぜミドリムシを入れると植物が成長するのか、そのメカニズムはどう考えていますか?
佐藤
3つの仮説を考えています。1つ目は、生きているミドリムシがコミュニケーションをすることによって成長因子を作っている可能性。2つ目は、ミドリムシのもつ部分構造が効果をもたらす可能性。3つ目は、揮発性の分子が因子である可能性です。
 1つ目の仮説は、通常のミドリムシと、葉緑体が少ないミドリムシで比較したときに、どちらも成長促進されたこと、2つ目の仮説は、ミドリムシを加熱したり、破砕して生きていない状態にしたものを入れても植物の成長促進に効果があるという実験結果から考えました。3つ目の仮説は、現在の実験系では確かめることができていません。
深野
ミドリムシの破砕はどうしているのですか?
田村
超音波をあてて破砕しています。そのときに熱が発生しないように氷水につけて行いました。
深野
へー、面白いですね。部分構造とはどんなものを想像していますか?
佐藤
まだ分からないのですが、一部の細胞の構造が壊れたもの、それが植物の成長に影響しているのかと。
深野
培養液中の酸素濃度とかは関係ないのかな。ミドリムシは光合成をするので酸素を作り出していますよね。
田村
私も興味を持って、酸素濃度を測定してみたんですけど、ミドリムシがいる系といない系であまり差がありませんでした。
深野
そうですか。しっかり仮説を持って実験をいろいろやっているし、結果もとても興味深い研究です。

学校での実験の様子。いくつかの条件で実験を繰り返し行います。

学校での実験の様子。種を蒔くための培地を調整しています。