公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第26回
副作用のない薬を作りたい!
その思いを胸に、核酸医薬開発の最前線を行く

第3章 Q&A

山吉
全体を通して最後に質問があれば、どうぞ。
外山
学生生活のこととか、何でもいいですよ。
荻原
大学でのサークル活動ですが、研究とサークルの兼ね合いってどんな感じですか。
外山
サークル活動は学部で卒業し、大学院に入ったらしないという人が多いかな。学部時代はそこまで研究に没頭することはないので、サークル活動をバリバリやることも不可能ではないと思います。ただ、修士課程に進むと両立はなかなか難しいかもしれないというのが個人的な感想です。
新井
先程のお話にあったように遺伝子は変異するので、新しい菌や薬物耐性を示すがんも出てくると思います。今後、あえて副作用を起こさないと阻止できないような菌が生まれる可能性もあるのでしょうか。
副作用のない薬ができても、また遺伝子が変異してしまったら??
山吉
がんも薬剤耐性菌も、生き残るためにそれまでとは違う性質を獲得します。こうして生き残ったものが、治療を困難にしているんですね。
その対抗手段の1つが、がん免疫療法。がんを殺すと、死んだがん細胞から中身が出てくる。そこには、正常な細胞にはなく、がん細胞だけにしか入っていないものがあります。体がこれを覚えると、次にがんができても、そのがん細胞しか持っていないものや転移したがんを攻撃しにいく。つまり、免疫を上げることに着目した治療法です。
体にとって薬って本当は毒なんですよね。だから、副作用を起こしてでも狙うより、体の仕組みを利用する方向かな。それにしても、新井さんは関心が高くて、すごいですね。
荻原
先程、廊下に貼ってある研究ポスターを見たのですが、その中に機械を使った生体デバイスのようなのがありました。それががん治療に使われることもありますか。
山吉
あのポスターを見て、この質問って素晴らしい! 私たちが研究している核酸医薬でよく行うのが、光を当てた時だけ薬効を発揮するような仕組みをつくること。光は体の中まで届かないので、光を出すデバイスを一緒に埋め込みます。ということは、「薬=化合物」とは限らないですね。
重度の不眠症患者さんに不眠改善のためのデバイスを装着するといった非薬物治療法が近年、急速に進化しています。従来の「治療=薬」というイメージから、生体デバイスのような材料にどんどん変わってきているのです。
薬って、錠剤や注射というイメージだったけど、今は違うんだ!
編集
先生のエクソソームを使った薬物送達システムの開発では、どのあたりが一番難しかったのでしょうか。
山吉
エクソソームは今いろいろな薬物輸送担体として注目されています。ただ、採取するのがものすごく大変。直径10cmのシャーレを30枚ぐらい用意し、体力のある学生さんが2日間ぶっ通しで遠心処理しても、見えるか見えないかぐらいしか取れません。
私が考えているのはもう少し簡便で、患者さんの体液中のエクソソームにくっつけて薬を届ける方法。くっつける表面抗原は、どんなエクソソームも持っているものを使っています。これを見つけたのは、たまたまです。入ると分かったので、そこに薬物をつけてみました。抗体医薬で使われている薬より、こちらの方がよく入ると思います。
荻原
生体実験はどれくらいの頻度で行われているのですか。
山吉
それは学生さんによって違うかな。人工核酸を合成する方法はいろいろあり、外山さんが行っているのは有機化学。できた人工核酸を細胞に入れたり、動物に入れたりしますが、この2つはだいたい同時並行で走っています。外山さんのように化学合成や核酸の開発をする人もいれば、できた人工核酸をマウスなどで評価する人もいる。評価する人たちはずっと動物実験をしています。
荻原
合成実験専門、動物実験専門という感じで分かれているのですか。
山吉
合成担当、細胞担当、動物担当というような分業制のラボもありますが、うちは一通り全部やる。そう、最後まで自分の分子の面倒を見るという感じでしょうか。
ちなみに、実験用マウスは私たちが気軽に入れないような特別な区画で飼育されています。SPF(Specific Pathogen Free)施設といい、それこそ防護服を着て入るような、高度なバリア機能を持ったエリアです。
編集
先生の研究生活の中で節目となったこと、あるいは「これで研究者としてやっていける」と思われた出来事はありますか?
山吉
そうですね、まず工繊大に行った時、村上先生のご厚意で自由に研究を立ち上げさせてもらえたこと。そして、自分で一から考えたテーマを学会で発表をした時、すごく反響が大きかったこと。研究者としてやっていけるかもと思ったのは、京都大学の白眉センターに行った時かな。
編集
白眉センターは結構とがった研究が多いと思いますが、その時のテーマとは?
山吉
マイクロRNA(miRNA)という小さな遺伝子があり、これを狙った核酸の開発なのですが、他の人とは少し違ったアプローチを取りました。
miRNAは単独で働くのではなく、最終的にはタンパク質との複合体(RISC)になって遺伝子発現を制御します。それまではRISCになるmiRNAに蓋をする核酸だったのですが、私は逆に剥がすようなのを作った。miRNAのポケットに競合阻害するペプチドをつけ、ポケットから剥がす。この分子を「リンダ」と命名。そう、山本リンダの歌「狙いうち」にちなんだネーミングです。というか、山本リンダって知らないよね(笑)。若い人に話すと「えっ、誰それ?」って……。
荻原
でも、生物学ではたまにありますよね。例えば、最近見つかった恐竜が「ドラえもん」の登場人物・のび太にちなんで「エウブロンテス・ノビタイ」と名付けられたように、割と柔軟というか。
山吉
学生の時、自分で作った分子に「やまとなでしこ」という名前をつけたら、ボスに「楽屋話はいらない」と却下されました。自分がPIになったら、絶対に自分で名前を付けようと思いましたね。
※PI(Principal Investigator):研究主宰者・研究責任者。
生徒
山吉先生、外山さん、今日は本当にありがとうございました。

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