この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第11回 独自のアプローチでクローン技術の再生医学への応用をめざす (独)理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター ゲノム・リプログラミング研究チーム チームリーダー 若山照彦 先生

夢を実現するための戦略を持とう

───クローンマウスの研究は将来どのように私たちの役に立つんですか。

羊と違ってマウスは実験動物なので、クローン研究を本格的に進めることができるのです。
私は、大学の畜産学科にいたときに、動物を増やし、食糧を増やしていくことが人間の幸せにつながることを学びました。だから、いつも食糧をどうするかということは頭にあるのですが、クローンマウスの研究を基礎にして、おいしい牛の体細胞を使ったクローン牛をつくれるようになれば、同じようにおいしい牛の肉を大量に生産できるようになると考えています。そうなれば、おいしい神戸牛を今の価格よりも安く食べられるようになるかもしれませんよ(笑)。

───再生医療に応用することはできないのですか。

私たちは今、クローンマウスをつくる技術を応用してクローン胚からクローンES細胞をつくり出すことに成功しました。ES細胞というのは、どんな細胞にもなれる細胞で、たとえば、患者さんの体細胞からクローンES細胞をつくり、治療に必要な細胞や組織に分化させた後で、患者さんの体内に戻せば自分の細胞からつくったものなので、拒絶反応の心配をしないで治療ができると考えています。

───最後に中高校生にアドバイスをいただけますか。

やりたいこと、好きなことを早くみつけて、それを実現できるように、自分で流れをつくっていくことが必要だと思いますね。私は小学校の卒業文集に「科学者になりたい」と書きましたが、それを実現するためにいろいろな研究機関の門をたたいて、夢にたどり着いた気がします。
それと体力をつけておくことかな。たとえば、マニピュレーターを操作するのは意外に体力がいるものなんです。午前中集中して操作すると、午後は3時間くらいなにもできないほど疲れてしまいます。研究というのは体力勝負なんですよ(笑)。
そうそう、私は中高校時代と英語がまったくだめだったのですが、今でも苦労しています。やはり、英語は勉強しておいた方がいいと思いますね。

(2011年5月9日取材)

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