───研究生活以外にも、いろいろな趣味を持っていらっしゃるとか。
研究だけでは、人生、おもしろくないんですよ(笑)。四六時中研究のことばかり考えて楽しいという人もいるけれど、私には無理ですね(笑)。
趣味はいろいろありますが、その一つがモータースポーツ。市販車で未舗装の道を走りタイムトライアルで順位を競う「ダートトライアル」に取り組んでいます。乗っているのは、スバルのインプレッサ2000CCですが、今住んでいる官舎には駐車場はあるけれど車庫がないので、屋根付きのガレージを別に借りて、土日はそこでつなぎを着てメカいじりです。
もう一つの趣味がカメラ。フィルムカメラからデジタルまで、いろいろなカメラで撮影してきました。現像、焼き付けまでやります。カメラもニコンのFシリーズやライカ、フジの中判カメラをはじめいろいろな種類を集めています。学会で出張したときなど、掘り出し物を安く買ってくるんです(笑)。

▲ ナンバー付きの改造車で未舗装路でのタイムを競う「ダートトライアル」
───最後に中高校生に伝えておきたいことがあったらお聞かせください。
みんな誤解しているけれど、科学というのは、必ずしもすべて合理的にできているわけではないことを知ってほしいな。
研究者というと、白衣を着て、科学的な法則に従って実験を積み重ねて研究を続けるというイメージを持っている人が多いでしょう。でも、研究者にとって必要なのは、その人の豊かな発想力であり、個性なんです。そういう意味では「人」が大事。
研究の醍醐味は、研究者が違えば、同じテーマでも解き方が違うということ。たとえば同じ哺乳類の初期発生を研究するのでも、どんな遺伝子が発現するのかを探究するアプローチもあれば、ES細胞を使って分化に関わる分子を同定する研究など、さまざまな角度から探究が進められています。
違う発想と、違う方法で課題に取り組んで課題の答えを見つけ出し、世界で一番早く他人が見たことがないものを見ることができることがやり甲斐ですね。
生命科学、とくに発生学は、まだ、分からないことだらけです。豊かな発想を持った若い人が、この分野に挑戦してきてほしいと思います。
(2012年10月28日取材)