この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」

アイデアを形にする力が必要

───研究者にとって必要な資質とはどんなものだと思われますか。

ほかの人と違う発想ができることが大切です。ただし、アイデアだけではだめで、それを実験してデータとして着実に示していく、現実の形にする能力が重要です。
生物の研究者にとって、生き物が好きである必要は必ずしもないのかもしれません。むしろ、生物の多様性の背後にある共通原理を見抜く力が問われているのではないでしょうか。
20世紀の生物学が、メンデルの法則や二重らせんの発見など、生物を共通言語で語ることを可能にしたとすれば、21世紀は、その共通言語を使って、生物がなぜこんなに多様になったのか、進化や多様性の謎を解析していく時代だと思います。

───先生が研究者に憧れた子ども時代に思い描いていた研究者像と、実際に研究者となって日々を過ごしているご自身と違いはありますか?イメージ通りでしょうか?

新しいことを発見する喜びを感じるのが研究者というイメージは、かつて思い描いていた通りで、研究の醍醐味です。当時気づいていなかったのは、研究を進めていくうえで、人と人とのコミュニケーションが重要だということ。自分一人で発見するわけではなく、過去の人の研究の上に成り立っていますし、他の研究者から情報を得たり、意見交換をしたり、共同研究やチームで研究を進めることも多いのです。コミュニケーションを上手に築くことによって、一人で考えていては達成できないさまざまな可能性が開けてくることをぜひ知っておいてほしいですね。

───最後に、中・高校生にメッセージをお願いします。

研究者が何かを研究しようとするとき、一つのアプローチだけでなく、いろいろなアプローチの方法があると思います。そうした多彩なアプローチを可能にするのは、広い視野です。若いときから、歴史や文学など、いろいろなことに興味を持って過ごしてください。芸術家が自然を見て絵画に表現することも、実は科学者のやっていることに近いのではないか。どちらも発想の豊かさが求められます。研究者になりたいからといって、そればかりにとらわれることなく、若いからこそできる体験を大切にしてください。それが必ず将来につながっていくと思います。

(2014年5月26日取材)

PAGE TOPへ
ALUSES mail