この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」

生物の先生の楽しい授業で、文系から理系に大転換

───作家が夢ということは、高校でも文系だったのですか?

ええ、現代国語が得意だったし、文学部に行きたいと考えていました。私が進学した高校は当時、普通科と進学科のほか京都国体をターゲットにした体育科がありました、進学科は理系と文系各1クラスで、私は文系の進学科に入学したのです。

───最初から文系の大学進学をめざす英才教育コースだったわけですね。

ところが、ある授業がきっかけで、文系から理系に一大転換することになるんです。文系クラスでも理科を1科目選択する必要があり、私は2年生のときに生物を選びました。授業は理系クラスで生物を選択した生徒と一緒に受けたのですが、担当の生物の先生が京都大学の理学部出身で、ものすごくおもしろい授業をしてくれたのです。とにかく授業のほとんどは実験でした。

───どんな実験をしたのでしょう。

例えば液体窒素を使って金魚を凍らせて、また生き返らせるとか。でも、そんなにうまくいかないんです。上手に凍らせることができないと死んでしまう。ちょっと金魚にはかわいそうですけどね。でも、その先生はそういうことも生物の授業の一環としてやらせてくれました。
ほかには、ニワトリの発生を観察しようということで、有精卵を買ってきてインキュベーターで孵化させてみんなで見守ったり・・・・・・。生まれたヒヨコは体育科の先生が家にひきとって育てていましたね(笑)。気づくと一番楽しい授業が生物で、一番勉強したのも生物でした。
高校の生物は暗記科目できらいだという人もいますが、私の場合、生物の教科書や参考書を暗記するのも好きでした。参考書の図版をノートにそっくり描き写すのが楽しくて仕方なかった。
そんなことから、私は、3年生のときに文系から理系にクラスを変えたんです。理系から文系に進路変更する生徒はたまにいましたが、文系から理系に変える生徒はまずいなかった。母親に相談したところ、母は一切反対せずに後押ししてくれました。

───なぜ、それほど生物が好きになったのですか。

うーん、そうですね、正直に言って本当のところは今でもよく分からないところがあります。一言でいうと「ハマッてしまった」というのが正しい言い方かもしれませんね。
ただ、子どものころから動物や生物が好きで、家庭の教育環境の影響もあって文学など文系に興味が向いてはいたけれど、先生の授業で生物のおもしろさに触れ、あらためて、生物学が好きなんだという記憶の奥底に眠っていた本当の気持ちに気づいたのではないでしょうか。だから、その先生がいなければ生物学の世界に進まなかったでしょう。学校の先生の影響力って、つくづく大きいと思いますね。

───文系から理系にコースを変えると、勉強も大変だったのではないですか。

そうなんです。数学や化学はとても苦手で、ついていくのがやっと。数学Ⅲで学ぶ統計学や確率などは生物学の解析でも必要なことがあるので、数学が苦手だった影響は大きいですよ。テストでは生物が一番成績が良く、次に国語、英語、社会と続いて、化学、数学はほんとダメでしたね。

───高校時代にクラブ活動はしましたか。

バスケット部に入っていました。得意というわけではなく、補欠でベンチを温めるだけの存在でしたが、始めたことを途中でやめるのはくやしいからずっとバスケ部を続けました。
バスケ部に入って良かったのは、普通科や体育科の生徒と交流ができたこと。同じ高校でも進学科の生徒と普通科や体育科の生徒とではまったく雰囲気が違うんです。受験勉強ばかりしている進学科の生徒と違って、アルバイトもしていて、女子は稼いだお金でおしゃれして、茶髪でパーマをかけていたり、ピアスの子もいた。
バスケ部に入ったことで、多様な生き方や考え方に触れることができました。

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