この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」

動物の行動を司るメカニズムを勉強したい

───生物学を学べる大学は当時いろいろありましたか。

実家から通えることが大学進学のひとつの条件になっていたので、その範囲で理学部で生物学科のあるところというとある程度限られていました。国立大は落ちてしまい、日本女子大の理学部に進学しました。
1、2年生のころは座学や実習などさまざまな必修のカリキュラムをこなしていたわけですが、3年次が終わるころには、同じ生物学でも植物か動物か、専攻を決めなくてはなりません。以前から動物が好きで動物行動学などを勉強したいと漠然と思っていたので、動物学の研究室に入ることにしました。
日本女子大の生物学科では、自分が研究したいテーマの先生が学内にいないときは、適切な外部の大学や研究機関を紹介してもらい卒論を書くことになっていました。動物の行動を司るメカニズムを勉強してみたいと先生に相談したところ、神経行動学という分野があって、上智大学の生命科学研究所で脳のしくみを研究されていた青木清教授がよいのではないかと推薦していただいたのです。青木先生のもとには現在北大の教授をなさっている松島俊也先生が助手として勤務されていて、私はお二人に指導していただきながら勉強を進めました。

───具体的には、青木教授の研究室でどんな研究をしたのですか。
大学卒業旅行で友人たちと北海道へ(右から2番目)

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大学卒業旅行で友人たちと北海道へ(右から2番目)

ウズラの発声が成長するにつれてどう変わっていくのか、そのときの神経メカニズムの変化を研究していました。この研究が鳥のボーカルについて興味を持つきっかけになりました。
鳥を含めて動物の行動は、脳の機能のアウトプットとして出てくるわけですね。ウズラが鳴くのは、どういう神経の活動があって脳のどの部位がどういう働きをしているのか、その因果関係を調べていくわけです。実際に調べるには、さまざまな日齢のヒナ鳥を使い、脳の一部を壊すと鳴けなくなるとか、あるいは脳の一部を刺激すると鳴くというような実験を繰り返し行って探っていきます。刺激のパターンを変えたら発声のパターンが変わったとすると、そこに何らかの関係があるわけです。
この期間は、どういう研究をするとどんなことが分かるのか、どのように論理を組み立てていくのか、研究の基礎的なことをお二人の先生から徹底して教えていただいた貴重な時間でした。特に松島先生にはほぼ一対一で手とり足とり教えていただいてとても感謝しています。
大学の4年生なんて、研究といってもまったく何からどう研究すればいいのか、ゼロといっていいくらいの状態です。そんななか、青木先生の研究室は研究員が4~5名くらいの小さな研究室だったのですが、少人数の環境でじっくり学ぶことができたのは幸いでした。
ここでの実験がおもしろく、卒論をまとめたあとも引き続き上智の大学院で学び、博士課程修了後も助手として残りました。

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