この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」

第39回 iPS細胞後の「新しい生命の捉え方」を、市民とともに考えたい。 京都大学iPS細胞研究所 上廣倫理研究部門 特定准教授 八代嘉美

Profile

八代 嘉美(やしろ・よしみ)
2003年名城大学薬学部卒業。2005年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修了。2009年同研究科病因・病理学専攻修了。医学博士。同年慶應義塾大学医学部生理学教室・総合医科学研究センター特任助教。2011年東京女子医科大学先端生命医科学研究所特任講師。2012年慶應義塾大学総合医科学研究センター 幹細胞情報室特任准教授。2013年より現職。著書に『再生医療のしくみ』『iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』『死にたくないんですけど-iPS細胞は死を克服できるのか』など。

profile
iPS細胞を使った再生医療をはじめ、遺伝子治療、免疫療法など医療技術の革新が進んでいる。ことにヒトiPS細胞の登場は、私たちのこれまでの生命観を大きく揺さぶることになった。自分の皮膚の細胞をiPS細胞化して生殖細胞をつくり、新しい生命を誕生させることができるのか? 豚など他の動物の体内で人間の臓器をつくり出して、患者さんに移植することは許されるのか? 今こそ専門家だけでなく一般の人も巻き込んで、新しい時代の生命観や価値基準を創り出すことが大切だと、CiRAの八代先生は呼びかけている。

高校1〜2年ごろまでは文系志望

───どこのお生まれですか。

名古屋で生まれました。母親が名古屋鉄道系の百貨店でインテリアデザイナーをしていた関係で、系列の病院で生まれました。その後すぐに岐阜県に引っ越し、小学校1、2年生ごろまで岐阜で過ごしました。それからまた名古屋の郊外のニュータウンに戻ってきて、大学までは名古屋を中心とした中京圏で過ごしたんです。

───子どものころはどんな遊びをしていましたか。

草野球をして遊んでいた思い出はありますが、外で遊ぶより家で過ごすのが好きでしたね。本や漫画が好きで、歴史書、伝記もの、明智小五郎が出てくる怪人二十面相シリーズなどの探偵小説を読み漁っていました。本と同様に好きだったのはマイコンです。小学1年のころファミコンがブームになり、親から「ファミコンを買うか、パソコンを買うか」と二者択一を迫られ(笑)、当時初級者向けのコンピュータとして売り出されていたMSXを買ってもらいました。当時はBASICという言語のプログラムがまるまる雑誌に掲載されているのが普通で、入力して遊んでいるうちに、なんとなくプログラミングも覚えました。

───子どものころ、自分を理系、文系のどちらだと感じていましたか。

祖父が薬剤師の資格を持っていたり、その妹が女医、私の父親は建築設計士だったし、いとこなども文系に行く人がおらず、一族郎党が理系という環境でした。そんなこともあってか、小学生のころは医者になりたいと思っていました。でも歴史書なんかが好きでしたし、とくに文理がどうとかは考えたことすらなかったです。
そのうえ、中学生になると、弁護士、裁判官、歴史の研究者などもいいなぁと思い始めて・・・・・・まぁ、気が多いだけで落ち着きがなかった(笑)。
高1~2ぐらいまでは文系志向でしたね。科目で好きだったのは、勉強しないでもかってに点が取れる現代国語(笑)。それと歴史、とくに世界史が好きで、理系の科目では、生物、化学もそこそこ好きでした。中学生当時から考えていたように、法律を勉強して弁護士にと思っていたのですが、周囲から「弁護士になるには難関の司法試験を通らなければならない。司法浪人とかたくさんいるし、失敗したら食えないぞ」と。それで「理系ならなんとでもなる」と言われ、ごはんが食べられないのも嫌なので(笑)、理系に進路を変えたんです。主体性もへったくれもないですね。

───では、学部選びはどのように…?

理転したなら小さいころ考えていたように医学部に行きたかったのですが、勉強していないから合格しないのも当然で、祖父が薬剤師だったということもあって、地元の私立大学の薬学部に進学することにしました。
なぜ医者になりたかったのかというと、小学生の時に筑波の科学万博が開催され、バイオテクノロジーなんかもブームになって、脳の話などが注目されたことが背景にあったと思います。脳を研究すると面白そうだけれど、実際にヒトの脳を用いた研究ができるのはお医者さんしかいない、という話をどこかで聞いたりしたからでしょう。薬学部でもヒトを対象にした「薬」を扱うわけだから、なにがしか生命科学の研究もできるだろうと思い、薬学部でもいいかなと考えたんです。

───勉強以外に、小学生から高校まで、クラブ活動などはどんなことに取り組んだのですか。

小学生のころはブラスバンドでトランペットを吹いていました。中学はテニス部、高校は水泳部、ついでに言うと大学は茶道部に入っていた(笑)。大学でも水泳をやろうと思ったのですが、薬学部にはプールがなくて断念。美術や歴史も好きでしたから、それなら茶道部に入ろうと。月1500円で茶道の先生も教えに来るし、お菓子も食べられると(笑)。テニス以外は、いまでも時間があるときには楽しんだりすることがあります。

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