この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」

ブラックジャックに憧れて

───高校はどのようにして選んだのですか。

進学校としても知られる名古屋にある東海高校に行こうと友人と一緒に受験して合格したのですが、私の家からは片道2時間もかかるので、通学できないと思い断念して自宅から何とか通学できる県立桑名高校に行きました。交通の便のよい町中に住む中学の友人達は東海高校に進学したので、ちょっと寂しかったですね。

───高校時代、将来についてはどう考えていたのでしょう。

私の家は祖父の代から医者で診療所を開いていたこともあり、漠然と将来は医学部に入って医者になろうと考えていました。手塚治虫の「ブラックジャック」に憧れて、あんな名医にはなれなくても、医者のいないアマゾンかアフリカに行けば少しは人助けができるのではと思っていました。

───では勉強にも一生懸命、打ち込んだのですか。

高校時代に地元の書店で見つけて感動したのが「一冊10円の参考書」です。ユークリッドの公理と100以上の定理が一つずつ載っていて、欄外にヒントがあるだけで背表紙もないホチキス留めの簡単な装丁のものでした。それを使って自分で定理を順番に証明した後、最後は平行線公理を変えて、知らず知らずのうちに、非ユークリッド幾何学に挑戦したことを覚えています。受験勉強というより、もっぱら自分の興味でやっていたって感じです。高校の教師からは「勉強もそれなりにできるのだから、ちゃんと受験勉強をしなさい」と言われていましたね。

───当時は研究者になろうとは考えていなかったのですか。

高校生のころは頭にありませんでした。当時は医学部に入れればいいというぐらいに考えていたのだと思います。だいたい高校の先生も、大学の研究者がどんな研究をしているのか、研究者とは何かを知らなかったですしね。

───医者以外の選択肢はなかったのですか。

文学にも興味はあったけれど、父が北杜夫、渡辺淳一、安部公房など、医者であり小説家でもあった文学者の例を持ち出して、「医学部に行っても作家にはなれる」って言うんです。それで「なるほどなあ」と変に納得してしまった(笑)。

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