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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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他の分野の勉強もして、いろいろな引き出しを持ってほしい

———研究室を率いる上でモットーはありますか。

いや、そのような重厚な方針はなくて、データがしっかりした面白そうな研究があると、ついイケイケでメンバーをけしかけてます(笑)。
子どものころ「コンバット」を見ていたという話をしましたが、親父が好きだったのは左利きの狙撃手ですが、私はサンダース軍曹。どうしてかな、とあるとき考えて、ハッと思ったのは、サンダース軍曹はどんなムチャな命令を出しても、どんな危険な仕事をやらせても、一回も「I’m sorry」って言ったことがないんですよ。チームを率いるならそういうサンダース軍曹でありたいな、と。もっとも、しょっちゅう謝ってますけど(笑)、

———これから研究者をめざそうという中高生にアドバイスをお願いします。

今、生命科学は総力戦の時代です。1人の人間があれもこれもと深堀りするのは限界があります。そこで、さまざまな分野の人との共同研究や、ツールの開発が必要になってきます。

例えば、細胞についてもっと詳しく観察したいとなったら新しい顕微鏡が必要になるかもしれません。自分で顕微鏡をつくることはできなくとも、多少なりとも顕微鏡の原理を知っていれば顕微鏡づくりの専門家と話をすることができます。だから、この分野だけと思わずに、情報科学、物理、化学なども含めて幅広く勉強しておくことが大切。そんないろいろな引き出しを持っておくようにしたい。ヤキが回った私のようになっては、一大事です。
もちろん、対等にというわけにはいかないかもしれませんが、ある程度の基礎知識があって、もう一回勉強しなおしたら、その分野のエキスパートとある程度は議論できるはずです。「そこは私には分からないのですべてお任せします」と完全に分業していたら、それでは共同研究にはならないと思います。

———「ここから先はあなたの領域なので口出ししません。そのかわり、ここからは私やります」というのでは、いい共同研究はできないというわけですね。

ユ=ナン・ジャン研究室の出身者で私より若い方の中に、いまスタンフォード大学の教授をしている素晴らしい科学者がいますが、とんでもなくエライなと思ったのは、あるとき、データを解析するのに数学の再勉強が必要だと気づいて、スタンフォード大学の数学のクラスに学生として通い出したのです。「よくそんな時間があるな。」と思いましたけど、「新しく数学で身を立てるつもりはないが、数学専門の共同研究者と話をしたときに何をやっているか大雑把でも分かるようにしておかないといけないし、こちらから注文を出すとき、こういうことをしてほしいと明確な言葉で伝えたいと思った」と言うんですね。

みなさんも、若いうちに多少最低限でも勉強しておけば、将来、きっと思い出しますよ。

(2017年6月21日取材)