公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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若い人よ、もっともっとディスカッションを!

———今は、研究室を主宰し、若い研究者や学生を指導する立場ですね。若手を指導していて、わくわくするようなシーンはありますか?

自分で手を動かすことが少なくなったので、もどかしい気持ちもありますが、やはり新しいことがわかると、うれしいですね。
最近の例でいうと、中国からの留学生の発見です。これまで私たちの研究室では、Nanos2を中心に、生殖細胞のオス化のメカニズムについて研究を進めてきましたが、彼は生殖細胞のメス化にはどんな因子がかかわっているのかを探究したのです。そして、SMAD4とSTRA8という2つの因子を発見しました。
この2つを卵巣の生殖細胞で働かないようにすると、卵巣という生殖細胞がメスになる環境にもかかわらず、生殖細胞中のオス化因子の遺伝子が活性化し、精子になる前の細胞とよく似た性質の細胞になることがわかりました。発見したとき、彼は飛んできましたよ。「先生、見てください!」って。それは本当に驚きでした。

———卵巣の中なのに生殖細胞がオスに誘導されるなんて驚きです。生殖細胞はまだまだわからないことが多いのですね。

生殖細胞の性分化のメカニズムを探るとひとことで言っても、まだまだナゾだらけなんです。なんとかして、ブレークスルーにつながるものを見つけたいとチャレンジを続けているんですが…。

———若手を育てるのは大変ですか?

育てるというのではなく、育つんだと思いますね。遺伝研は総合研究大学院大学で教育も大きな仕事の一つ。私も学生を教えていて感じるのですが、みなけっこうトレーニングされています。まず英語教育が充実していて、授業はすべて英語。うちのラボも全部英語で、プレゼンテーションやジャーナルを紹介するときも英語でやっています。すると、初めは英語に自信のなかった人もすぐにしゃべれるようになります。学生は吸収が早いですね。若いうちほど伸びます。将来のことを考えると、知的好奇心を持った若い研究者が巣立っていくことが一番大切です。今の私の仕事はそのサポートかな。

———研究者を志している人にメッセージをお願いします。

ディスカッションするということがすごく大事ですね。いつも言うんですけど、今の子たちってあまり話さないんです。うちのラボでも、ちょっとわからないことがあったら聞けばいいじゃないと思うのになかなか聞きに来ない。私なんかわからないとすぐ聞いていました。いろいろ質問しているうちに自分の考えがまとまってくるということもあるんですよ。だから、ラボでは週に1回は必ずメンバー全員とディスカッションするんです。ディスカッションしていると、1人で考えていたときには浮かんでこなかったアイデアがひらめいたりする。「あっ、それがあるじゃない!」って。やっぱり、自分の意見を人に言うべきだし、人からのフィードバックをどんどんもらうべきだと思いますね。

相賀先生の趣味はダイビング。「ダイビングをしていると、枯れ葉にしか見えないような魚が泳いでいる。生物の多様性ってすごいですよね、例外だらけで。そういう多様性を解き明かすような研究もおもしろそう」と語る

2018年4月、遺伝研名物の桜が満開のなか、ラボメンバーとともに

(2018年6月5日更新)